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北朝鮮を訪れた日本人観光客は、案内員(ガイド)から写真撮影について次のような説明を受ける。

「何を撮っても構いませんが、軍服を着ている人と工事中の現場は撮らないでください」

「軍服を着ている人」とは朝鮮人民軍(北朝鮮軍)、安全部(警察)、保衛部(秘密警察)などの関係者を指すと思われる。軍や警察の建物、人員の写真撮影を保安上の理由で禁止している国は多く、これは理解できる。しかし、「工事中の現場」は一体なぜだろう。

おそらく「ごちゃごちゃしたところを見せることは、自国は貧乏だという悪いイメージを外国に与えることに繋がりかねない」というのが、当局の考えだろう。市場や売店の撮影を禁じるのも、同じような理由からと思われる。

(参考記事:北朝鮮ツアー、北朝鮮旅行は今後どうなる…実は近くて普通に行けるおすすめ北朝鮮ツアー・北朝鮮旅行

外国人がそのようなところを撮影しても、やんわりと諌められる程度で済むが、自国民ならそうはいかない。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が、そうしたケースの詳細を伝えている。

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事件が起きたのは2月20日のことだ。会寧(フェリョン)で写真館を営むカメラマンが、保衛部に逮捕された。容疑は「スパイ行為」だ。

会寧は、中国国境と接する地理的条件から、家族の中に脱北して韓国や他の国に住む「越南逃走者家族」(脱北者家族)の多い土地柄だが、このカメラマンも例外ではなかった。保衛部の監視対象とはなっていたものの、これまでは大きな問題にもならず平穏な暮らしを営んできた。

今月12日の旧正月、写真館を訪れたある家族から写真の現像を頼まれた。写真と共にネガも返してほしいと言われたのだが、カメラマンは手違いで別のネガを渡してしまった。

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この家族はネガを見て、間違いだとすぐに気づいたのだが、よくよく見てみると、北朝鮮では一般的ではない写真が含まれていることにも気づき、保衛部に通報した。

保衛部は20日、突如として写真館に踏み込んで、カメラマンを逮捕し、すべてのフィルムやネガを押収した。その中には、コチェビ(ストリート・チルドレン)を収容する愛育院、金日成主席、金正日総書記の銅像、市内の主要施設に加え、市民がリアカーを引いて市場に向かう日常の風景を撮った写真が含まれていたが、これが問題となった。

金日成氏と金正日氏の銅像やモザイク壁画などは、北朝鮮で最も神聖な場所とされ、24時間体制で警備が行われている。万が一、破壊や破損などが起きれば、最高指導者の権威の毀損と社会不安に繋がり、地元幹部のクビが一斉に飛ぶことは避けられない重大政治事件となる。

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過去には、平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)で銅像の片腕が壊される事件が起きるなど、全くの杞憂ではないのだが、銅像の写真が破壊行為の計画を練るために撮られたと保衛部は考えたのだろう。

(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

保衛部が下した結論はこのようなものだった。

「わが国の貧しさを示す現実を撮って、敵対国に送った」
「カメラマンを装い、スパイ活動を行っていた」

フィルムとネガに加えて、外国映画のファイルが保存されたUSBメモリも、家宅捜索の過程で発見された。最近成立した「反動的思想・文化排撃法」に違反する行為だ。

(参考記事:「韓流ドラマ見て死刑」連発が懸念される北朝鮮・韓流取締法の中身

保衛部は、カメラマン本人のみならず、家族、親戚、友人はもちろん、写真館の客まで出頭させ、取り調べを行っている。

脱北者を家族に持つ会寧市民は、とばっちりを受けるのではないかと戦々恐々としつつ、事件の捜査を見守っている。保衛部は、この事件の後に、脱北者家族に対する監視を強化せよとの指示を下しており、地域担当の保衛員は、情報員(保衛部のスパイ)を使って、彼らの一挙手一投足を監視する動きに出ているとのことだ。