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デイリーNKでは以前、韓国から300キロも離れた北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)の博川(パクチョン)で、韓国の公共放送KBSのテレビを見ている朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の軍官(将校)がいると報じた。民間人の韓流視聴を取り締まる組織が、軍の敷地には入れない点を利用したものだ。

(参考記事:北朝鮮山奥で「韓国テレビ放送」が受信可能…ソウルから300キロ

さすがにこれは珍しい事例だが、韓国に近い黄海道(ファンヘド)、江原道(カンウォンド)など、韓国に近い海沿いの断崖絶壁や、山奥、軍事境界線付近など、人里離れたところで勤務する兵士が、リアルタイムで発信される韓国の情報に触れていることは公然の秘密だ。

そんな影響もあってか、軍内部で韓国のアイドルグループ「防弾少年団(BTS)」や、韓国風の言葉遣いが「蔓延」する有様となっている。

(参考記事:15年やっても効果ない「韓国語禁止令」を繰り返す北朝鮮

韓流をターゲットにした「反動的思想・文化排撃法」が12月4日の最高人民会議常任委員会第14期第12回総会で採択されたのをきっかけに、デイリーNKの軍内部情報筋は、軍でも韓流の取り締まりが強化されていると伝えた。それもかなりの強度で取り締まりが行われており、もしかしたら北朝鮮の軍人が主人公となった韓流ドラマ『愛の不時着』が軍内で密かに流行しているのかもしれない。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

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朝鮮人民軍の保衛局(かつての保衛司令部)は今月18日から、各軍において反探(反スパイ)講習会を行っている。「反動異色分子をあぶり出そう」をテーマに毎年行われているものだが、今年は「反社会主義思想文化の流入、流布を徹底して防ぎ、わが国(北朝鮮)の思想、精神、文化をしっかり守護」するために規則を遵守することが強調されている。

また「われわれの社会主義の内部から瓦解させる敵どものあらゆる策動を適時に摘発、粉砕し、わが国の制度、階級陣地を守らなければならない」とも強調している。

さらに「欺瞞的な出版物、映像、音楽、踊りなど、資本主義思想、生活風潮にいかなる期待も幻想も抱いてはならず、チュチェ(主体)性と民族性を守りぬくことに、人民軍が先頭に立つべき」とも述べた。

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その場では、具体的な実例も挙げられた。国境警備を担当する区分隊の軍官と士官が週に2回も、夜通しで腐敗堕落した外部映像(韓流ドラマ、映画)を見ていたことが発覚したというものだ。

(参考記事:「退廃的な踊り」を見とがめられた北朝鮮軍の兵士たちの運命

軍保衛局も、使い古されたレトリックを並び立てたところで、効果がないことを認識しているのか、スパイ、密告者を養成して密告させる作戦を取ろうとしている。

各部隊の保衛機関(秘密警察)は、模範的な軍人として、秘密情報員を養成し、軍人個々人の思想動向状態を把握し、指導せよとの指示を下した。

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「敵対分子の思想文化的浸透は芽の段階で無慈悲に摘んで叩き潰さなければならない」(保衛局)

スパイ、密告者候補に選ばれた人は、非常に苦しい立場に置かれる。自らの行動、言動を密告されれば命取りになりかねないことをよく知る北朝鮮の人たちは、スパイや密告者であることがバレた者を徹底的に排除し、時には暴力を振るうことすらある。

一方、スパイや密告者は、上から「実績」を上げることを迫られる。手心を加えていたことが発覚でもしたら、今度は自分の身が危なくなる。

(参考記事:従姉妹を売った北朝鮮「エリート候補」を待ち構える運命

しかし、どんな手段を使ったところで、韓流の浸透を抑え込むのは不可能だろう。