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パヴリク・モロゾフという14歳の少年は、スターリンが農業の集団化を進めていた1931年、村長だった父親の不正行為を見咎め、当局に密告した。父親は強制収容所送りとなった。密告を褒められた少年は、村人の不正行為を次々に告発するようになった。

彼はソビエト時代に立派な少年としてプロパガンダに利用されたが、彼は弟とともに非業の死を遂げていた。密告を恨みに思った父方の親戚に惨殺されたのだ。

儒教文化圏である東洋では親、家族を大事にする「孝」と、国や王を大切にする「忠」は対立関係にあり、それを乗り越えるための理論が、国を家族に例え、王を父に、国民を子どもとする「家族国家観」だ。その典型が戦前の日本であり、今の北朝鮮だ。そのことは金日成主席の枕詞となっている「オボイ」(父なる)にも現れているが、その一方、「忠」を重んじるあまり「孝」をないがしろにするとしっぺ返しを食らいかねない。

両江道のデイリーNK内部情報筋は、親戚の女性を密告し出世を勝ち取った国境警備隊員の話を伝えた。

平安南道(ピョンアンナムド)出身の女性Aは、同じ村の人から借金をして、恵山(ヘサン)と行き来して商品を運ぶタルリギと呼ばれる商売をしていた。ところが、返済が滞るようになった。情報筋はその理由に触れていないが、他の商人と同様に国際社会の制裁による不況、コロナ対策としての国境封鎖などによるものだろう。

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そこで、彼女は脱北して中国に逃げることを考え、今年1月中旬に国境警備隊で勤務するいとこBを訪ねた。脱北の手助けをしてもらうためだ。金正恩党委員長の指示でこの数年来、国境警備が非常に強化されており、彼らの協力なしに脱北するのは非常に困難だ。無謀な挑戦をすれば、悲惨な最期が待っている。

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おりからの国境封鎖で監視の目が非常に厳しく、川を渡ることを断念したAは、1ヶ月以上知人の家に身を潜めていたが、しびれを切らしたのか、Bに「私を中国に売り払って、そのカネを返済に当ててくれ」と脱北ブローカーを紹介するように頼んだ。

そして今月9日の夕刻、AはBに言われたとおりに国境の川に向かった。「ブローカーが川べりで灯りを点滅させたら渡れ」という指示に従って、河原に降りたところ、待ち構えていたのはブローカーではなく国境警備隊だった。彼女はその場で逮捕され、金亨稷(キムヒョンジク)郡の保衛部(秘密警察)に連行され、事件のことは政府の国家保衛省にも報告された。そして、どういうわけかいとこが表彰を受けた。密告したのだった。

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Bは兵役で国境警備隊に配属されたが、密輸に関与していたことが複数回にわたって問題視された。エリートになるには朝鮮労働党の党員になることが必須だが、そのためには自分の過去の過ちを上回る功績が必要だった。それで親戚であるAを売ったのだ。

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Bは今月15日、「今のような非常の時局に国家保衛のために貢献した」として、金正日青年栄誉賞を授与された。金日成・金正日主義青年同盟のメンバーがもらえる勲章の一種で、将来を約束されたも同然だ。また、労働党員になることも認められ、太陽節(4月15日の金日成主席の生誕記念日)の記念として大学入学の推薦まで得られることになった。

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それだけではない。国境警備隊の司令部は、宣伝隊に今回の事例を演劇にして、各地を回って模範的な事例として活用するよう指示した。「透徹した愛国心と国家保衛精神を見習おう」という内容で、軍官(将校)やその家族の前で上演されたとのことだ。

さて、身内を密告したBだが、幸せになれるとは限らない。

北朝鮮の人々は、そこら中に潜んでいる密告者やスパイを徹底的に排除する。のさばらせておけば、密告され、自分の身に危険が迫りかねないからだ。そのためには、探し出して徹底的に問い詰め、二度と密告できないように恐怖心を当たえるという。

未来のエリートで栄誉賞授与者とあって他人は手が出せないとしても、親戚、特にAの親は黙っていないだろう。Bの運命は、モロゾフ少年のような悲惨な最期かもしれない。

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