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北朝鮮にも「韓流」の風が吹いている。日本、中国、ベトナムなど東南アジアで吹いた韓流の風は、ついに北朝鮮全域を覆うに至った。2000年代初期から始まった韓流は、すでに一部の農村地域や高齢者世代を除き、事実上北朝鮮を制覇した。

最近、北朝鮮の住民に大人気の韓国ドラマが「笑ってトンヘ」、「マイダス」だ。特に、若い世代はタイトなスキニー・ジーンズやハイヒールを履き、「腹が減っても韓国の歌は聞いて、映画も見る」と言われるぐらい韓流の最大の消費者になった。

平壌の大学生は公の場でも、処罰を避けるため、メロディだけのK-POPに合わせて踊る。デイリーNKは、中朝国境で出会った北朝鮮の人々に「韓流の現状」を聞いてみた。

(参考記事:韓流ドラマ検閲部隊「109常務」の取り締まりが強化

韓流は全ての階層で「公然の秘密」

2000年代初頭までは中国朝鮮族の間で人気を呼んだ韓国ドラマなどのヒット作品が、平壌や大都市で人気が出るぐらいだったが、今では「韓国製」というとすぐに通じる。

平壌で商売をしているキム・ウンヘさん(仮名、40代女性)は、10年も韓流ドラマを見ているという。

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「(流行に)の敏感な若者たちは、いくら国が統制してもこっそりと韓流ドラマを見る。2005年に、夫の実家に言った時、VHSテープで天国の階段、男の香りを初めて見た」

「(最近韓国で人気がある)ヒョン・ビンよりはクォン・サンウの方が魅力がある。クォン・サンウのドラマは10回ぐらい見た。ヒョン・ビン、クォン・サンウ、イ・ボムス、コ・ヒョンジョン、ハ・ジウォン、チェ・ヨジン、イム・ヒョンシク、イ・スンジェなどを知っているが、イム・ヒョンシクは自分のイメージをうまく生かして演技も上手だ」

キムさんは、最も演技が上手い俳優として、男優はイ・ボムス、女優はハ・ジウォンを選んだ。イ・ボムスの演技は「味があっていい」と称賛する。

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最近では、一般の人でも最新ドラマに接することができるほど、韓流の流入スピードが速くなっている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)からやってきたリ・ヘスク(30代女性)さんは、「最近では、笑ってトンヘもマイダスも面白かった」と述べた。インタビューを行った当時、この2つのドラマはまだ韓国で放送中だった。

比較的、外部から情報が伝わりにくい農村でも韓流ドラマが公然と広まるくらい、韓流は北朝鮮全域に広まっている。

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「知り合いが外国から持ち込んだ韓流ドラマを一度だけ見た。農村は、テープを手に入れるのが大変だ。それでも、信用できる知り合いの間で、録画されたテープやVCDで、韓国の映像や翻訳された外国の映像を見ている」
(平安南道<ピョンアンナムド>徳川<トクチョン>協同農場の農民)

韓流はドラマだけにとどまらない。K-POPも流行している。

「平壌の大学生は、メロディだけのアップテンポのK-POPで駅前で踊っています」
(キム・ソンファさん、南浦製鉄所物資供給員)

「若者たちは、踊りたくしょうがないから歌詞がない伴奏で踊ります。当局の青年近衛隊は取り締まろうとするが、伴奏だけで歌詞がないので防ぎようがない」
(リ・ヘスクさん)

韓流俳優のファッションやヘアースタイルなどを真似る若者たちのおかげで「ペンテ・ズボン」「チン・ズボン」「サム・ピース」などの言葉もできた。「ペンテ・ズボン」と「チン・ズボン」は、タイトな「スキニージーンズ」のことであり、「サム・ピース」とは「ワン・ピース」のことだ。

「毛皮のコートと、スキニーが流行している。特に平壌はトレンドが早く、サムピース(ワンピース)も流行っている。俳優のようにロング・ヘアーを解いたまま、短いスカートを着たり、(男性は)ヒョン・ビンのように頭をたてたり髪を染めることもある」
(キム・ウンヘさん)

(参考記事:北朝鮮の若者「中国の文化は流行遅れ、今は韓流」

商人の間で韓国製品は、飛ぶように売れる人気アイテムだ。他の製品より、質が良く2〜3倍高い値段でも売れるからだ。中国朝鮮族で北朝鮮との貿易に携わるパク・ヨンミンさんは「貿易関係の責任者や、余裕のある幹部はいい物を買う。(幹部の)家に行けば、韓国製品ばかりだ」と話した。

「中央党、保衛部、軍部などの特権階級でこっそり資金を持っていたり、商売で金儲けをした人々は、全て韓国製の化粧品を使っている」
(キム・ウンヘさん)

「一部の裕福な人は携帯電話を持っている。北朝鮮製だが、韓国サムソンの携帯電話『Any Call』が(いいことくらいは)皆知っている。韓国製や日本製の化粧品や薬が中国を通じて入ってくるが、全て値段は高い」
(リ・ヘスクさん)

韓流はいかに北朝鮮に流れ込むのか?

北朝鮮の韓流は中国が発信源だ。中国吉林省縁辺朝鮮族自治州の延吉、遼寧省の丹東、、瀋陽など、朝鮮族が多く住む地域のネット・カフェは、衛星放送で受信した韓流ドラマを録画し、朝鮮族に若者に販売する。それが、VCDやDVDにコピーされて、密輸業者によって北朝鮮に持ち込まれる。

「中国と北朝鮮を行き来する身内を通じて韓国の番組を初めて見た。その後、中国から北朝鮮に(直接)DVDとVCDプレーヤーを送ったことがある」
「主に、外国にいる幹部が(韓国映像物)を持ち込む。そして貿易商人の子弟を通じて広がる」
(キム・ソンへさん)

値段は非常に高いが、食事を我慢してでも見ようとするという。

「密輸業者が、一般家庭にDVDプレーヤーを販売するが、とても高い。ただ、発展した文化への好奇心が強いので、食べ物を節約してでも韓国の映像を見ようとする。余裕があればプレーヤーを買う」
(リ・ヘスクさん)

北朝鮮では、コメ1キロが約2000ウォン(20日基準)だが、韓流ドラマのVCDは、1枚3000ウォンほどで取り引きされるほど高額だ。

韓流の広がりは、映像を見るためのハードの利用事情にも変化させた。2000年代初頭は、TVアンテナで中国延辺のテレビや、中国製のVCDやDVDで見るしかなかったが、2005年に当局がプロパガンダ映像を見る目的でDVDプレーヤーを合法化し、一般家庭に普及したパソコンのハードディスクやVCDを通じて、韓国の映像が広がった。

最近は、保衛員(秘密警察)の取り締まりを避けるため、メモリーカードが若者を中心に急速に広がっているようだ。

「息子たちも、以前はVCDを持っていたが、今はメモリーカードだ。いくら、探知機などで取り締まりをしてもプレイヤーに挿入しておけばわからない。それでも、見つかれば追放されたりするので、友人宅でノートPCを使って最新のものはまとめたりする」
(キム・ウンヘさん)

「北朝鮮の若者は、食べるものがなくても(韓国の)歌や映画は見ようとするので、(北朝鮮商人は)MP3のようなデジタル機器を多く手に入れて、中国語学習用として韓国製電子辞典などのも売る」
(パク・ヨンミンさん)

衛星TVや対北短波ラジオを通じて、リアルタイムに韓国の情報に接することもある。「北朝鮮でラジオ・フリー・アジア(RFA)を聞いたことがある」と述べたキム・ソンファさんは、「衛星アンテナを通じて、36個のチャネルを見ることができる」と語った。

電力事情が悪い北朝鮮で、映像を見るためにはバッテリーが必需品だ。

「(よく電気が停まるから)各家庭では、電気が通っている時間に、携帯用バッテリーや自動車のバッテリーに充電しておいて、TVを見たり映像を録画したりする」
(リ・ヨンシルさん)
(参考記事:北朝鮮の若者「中国の文化は流行遅れ、今は韓流」

韓国へのあこがれが体制変化につながる?

北朝鮮の「韓流」は、特に若者がリードしている。

「平壌市の学生の大部分は、韓国の映像物を見たせいか踊ったりして遊ぶのが好きなようだ」
(キム・ソンファさん)
「若者はスキニー・ジーンズをよく着る。当局はジーンズを着るなと言うが、ヘアースタイルや紙の色など外見には神経を使い、流行には敏感だ」
(リ・ヘスクさん)

リさんは、娘にダボッと服を買ってあげたのだが、「お母さん、これは流行遅れよ」と言われたという。リさんは「最近では、服をタイトにお直しする店があるほど、子供たちは、タイトな韓国服を好んでハイヒールを履く。また、若い男性は、英語がプリントしてある服をよく着る。英語の意味を知らずに着れば関係ないが、意味を分かっていれば取り締まりの対象になる」と話した。また「韓国風に髪の毛も整えて、ソウルの言葉を真似て「オッパ(お兄さん)」などと呼ぶ」と付け加えた。

北朝鮮に吹く韓流の風は、統制された情報の中で生きてきた北朝鮮の住民たちに、外部情報を提供し、北朝鮮社会と韓国社会を比較させる。それは果たして、体制への抵抗に繋がるのか。

「韓流、北朝鮮を揺さぶる」の著者である、カン・ドンワン統一研究院責任研究委員は「北朝鮮住民は韓国ドラマにあらわれた発展の姿を見ながら、北朝鮮のプロパガンダがウソであることを悟ると同時に『私も、あんな所で住みたい』という幻想と憧れを抱く。韓国への憧れが体制へ抵抗する直接的な要因になることは難しいだろうが、一定レベルの体制不満が、体制を変革するきっかけとなるだろう」と指摘した。

しかし、北朝鮮当局の一方的な宣伝と扇動に慣らされた北朝鮮の住民が、「韓流ドラマ」「韓流映画」という「作られた虚像」に接しただけで、韓国の現実を判断するのは難しいという限界も指摘される。

「いい作品もあるが、暴力的で人を殺すようなヤクザ映画は好きではない。恋愛ドラマでもあっちの人と付き合ったり、こっちの人と付き合ったりと節操がない」
「北朝鮮では、映画のように行動しろと宣伝し教養するものだ。韓国映画も、節操のない恋愛をしろと宣伝しているみたいだ」
(リ・ヘスクさん)

その一方で、リさん「韓国は、生活が大変だという北朝鮮の教育をそのまま信じてきたが、映画を通じて韓国も良心的で道徳的で人情があり、いい生活をしていることを知った」と肯定的に答えた。

カン・ドンワン研究委員は「韓流ドラマを見て韓国へ来た脱北者の一部は、韓国ではたくさん金を儲けられるとの幻想を持って来る場合もある。しかし、注目すべきは「韓流」によって(北朝鮮住民が)韓国社会の自由を見るきっかけになったことだ」と指摘した。

(参考記事:北朝鮮で資本主義の芽生え「自分の収穫をなぜ国家に捧げなければならいのか?」

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