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北朝鮮では「チョナトン」と呼ばれる、携帯電話を使ったキャッシュレス決済が人気を博していたが、当局は今年7月、このシステムを禁止する措置を取った。大損した人もいて、少なからず混乱が生じた。

(参考記事:北朝鮮で普及「キャッシュレス決済」に金正恩氏が禁止令

その一方で当局は、QRコードを使った新たなキャッシュレス決済システムを導入した。一見便利そうだが、消費者の反応は今ひとつだ。デイリーNKの北朝鮮内部情報筋がそのようす伝えた。

先月サービスが始まったのは「ウルリム(響き)2.0」と呼ばれるシステムだ。従来の1.0では、朝鮮中央銀行のキャッシュカード、朝鮮貿易銀行のナレカードだけが登録可能だったが、新しいシステムでは高麗銀行の高麗カード、大成銀行のクムキルカード、黄金の三角州銀行の先鋒カードなど20種類のカードが登録可能となった。

いずれも商店で利用可能で、携帯電話、固定電話、電気料金の支払い、送金にも使え、他の銀行の利用者宛にも送金できる。使い方は、スマートフォンにアプリをインストールし、QRコードを提示する形で、カードを使っての決済も可能だ。

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個人の蓄財など、資金の流れを国が管理できなかったチョナトンとは異なり、新システムは国が資金の流れを随時把握できる。また、外貨でチャージさせることで国庫の外貨不足を緩和する意図があるものと思われる。

しかし、北朝鮮国民はそんな当局の目論見を見抜き、新しいシステムを疑いの目で見ている。

「(ウルリムを使用しているのは)平壌、地方幹部、トンジュ(金主、新興富裕層)、貿易業者、両替商だけだ。彼らも国が資金の量、流れ、支出のありかたのすべてを監視するということに不満を抱いている」

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北朝鮮では金持ちであることそのものが罪悪視され、下手をするとイチャモンをツケられ、財産を奪われかねない。また、保衛部(秘密警察)、安全部(警察署)、朝鮮労働党などにたかられるリスクも高まる。

(参考記事:金正恩の「拷問部隊」が手を染める悪徳三昧の新商売

カネが持っていたとしても、できる限り知られないようにするのに、カネの流れが筒抜けになる新システムを喜ぶわけがないのだ。また、銀行を介する形も、銀行に対する信用度が極端に低い北朝鮮では好まれない。

2009年の貨幣改革(デノミネーション)、時々行われる強制預金キャンペーンなど、銀行は国民からカネを奪い取り国庫に納める役割を果たしている。預けたが最後、引き出すことが非常に困難になり、チャラにされたりもする。

(参考記事:北朝鮮の地方銀行が「強制預金」キャンペーン