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米国のシンクタンクが2016年に脱北者を行った調査によると、調査対象の36人中35人が「隣人、友達、家族に個人的に国や暮らしについて不平不満を述べたり、批判したりする」と答えている。

これは「マルパンドン」、直訳すれば「言葉の反動」、つまりは反体制的な言動のことだ。北朝鮮ではそうした言動がバレると、下手をすれば命取りとなりかねない。それでも抑圧的な体制の下で生まれ育った北朝鮮の人々は、体得した絶妙なセンスを発揮し、お上をけちょんけちょんにけなして溜飲を下げる。しかし、時々その感覚が狂うことで悲劇が生まれる。

(参考記事:殺されても「金正恩ジョーク」を止めない北朝鮮の人々

デイリーNKの内部情報筋によると、取り返しのつかないミスを犯したのは、大量破壊兵器の開発を担う北朝鮮「第2自然科学院」の傘下にある龍城(リョンソン)弱電工業大学に通っていたチャンさんだ。

チャンさんは平壌出身で、軍に入り、南北の軍事境界線上にある板門店(パンムンジョム)共同警備区域(JSA)で8年間勤務した。日本でも人気を集める韓国ドラマ「愛の不時着」の舞台だ。

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長年、弱電の分野に関心を持っていたチャンさんは、昨年秋に軍団の隊列課(一般兵士の人事担当)の推薦と「未来が明るい」との評価を受け、除隊後に大学に入った。成分(身分)が良くなければ決して歩むことの許されない人生だ。

(参考記事:【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層」

問題の発端は今年7月。チャンさんは誕生パーティの場で同級生からこんなことを聞かれた。

「南朝鮮(韓国)の人を見たことがあるか」

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その受け答え程度なら大きな問題にならなかっただろうが、男性同士で集まれば酒が欠かせないお国柄の北朝鮮。相当酔っ払ったせいか饒舌になり、こんなことまで話してしまった。

「軍事境界線には『帰順電話』というものもある」

さらには「北朝鮮の軍人や住民の帰順(亡命)と脱北を安全に誘導するための装置」などと詳しい説明まで付け加えた。初めて聞く話に同級生たちは興味津々の様子だったという。

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この帰順電話とは、韓国側の鉄柵から数百メートルのところに設置された電話機、インターホン、案内文、白旗、反射バンドなどのことを指す。2012年10月、軍事境界線に張られた鉄柵を超えて、韓国側に入った朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士が、韓国軍の哨所のドアをノックして亡命を申し出た「ノック帰順」と呼ばれる事件が起きた。一連の装置はこれをきっかけに設置されたものだ。このときは、韓国軍の警戒の緩さが大問題となり、将軍5人を含む14人が処分を受ける事態に発展した。

北朝鮮にとっては目の上のたんこぶ的な存在で、2014年7月には、北朝鮮の特殊部隊の隊員が複数回に渡り、帰順ベルを鳴らして逃げる「ピンポンダッシュ」や、設置された電話を奪い取る事件を複数回に渡って起こしている。

初めて聞く軍事境界線の話に興奮した同級生が、帰宅後に母親に自慢するかのように話してしまった。この話はすぐに地元の保衛部(秘密警察)に報告された。平壌市内中心部の住宅地で人民班長(町内会長)を務める母親だが、実は30年以上に渡って保衛部の情報員(スパイ)として活動してきた人物でもあったのだ。

そして今月24日午前。大学の講義室に突然男たちが踏み込んできて、チャンさんを連行していった。その光景を見守ったであろう学生たちは恐怖に震えたに違いない。男たちは国家保衛省(秘密警察)国内反探局3課の要員だった。逮捕の理由について国家保衛省は大学側に「政治的発言のせい」とだけ説明した。

逮捕後の取り調べでチャンさんは「酒の上の失言だった」と弁明している。酒飲みが多く酒にまつわる失敗の多いお国柄だが、政治的な発言は決して許されない。当局は父親の面会を禁止するなど、事案を深刻なものとして扱っている。

(参考記事:酒に酔い「禁じられたひと言」で逮捕された北朝鮮の秘密警察

越南(脱北)扇動と軍事機密漏洩の罪で、本人はもちろん家族が平壌やら追放されるのではないかと噂されている。学生たちはチャンさんの噂話でもちきりだが、類が及ぶことを恐れる大学当局は、かん口令を敷いている。

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