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北朝鮮には金日成・金正日栄誉賞というものがある。社会貢献や模範的な行為を行った朝鮮少年団の団員(8〜12歳)や金日成・金正日主義青年同盟のメンバー(13歳以上)に与えられるものだ。

元々は金正日総書記が1970年代に作った、小中学校の児童、生徒に対してウサギや犬の皮、薬草、山菜などを供出させ、輸出して外貨を稼ぐという「ビジネスモデル」の奨励のために設けられたものだ。1974年の政令に基づき、金日成少年栄誉賞と青年栄誉賞が、2012年には金正日少年栄誉賞、青年栄誉賞ができて、受賞者は勲章が授与され、将来が約束される。

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これは一般的に「金日成・金正日栄誉賞」と呼ばれ、以前からカネで売買されていたが、最近になって価格が上昇傾向にあると北朝鮮北東部の経済特区、羅先(ラソン)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

羅先では少年栄誉賞が2000ドル(約21万1000円)、青年栄誉賞が3500ドル(約38万7000円)で取り引きされていたが、今年に入ってからはそれぞれ3500ドル、5000ドル(約55万3000円)と大幅に値上がりした。その理由を情報筋は次のように説明した。

「子どもを1人か2人だけ産んで大事に育てて幹部にしようとする金持ちの親が増えていて、栄誉賞の需要が高まり、取引価格も上昇している」

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金持ちの親の心理は「子どもを権力者にすれば不確実な未来の担保になる」「子どもが党幹部になって権力を握れば、安全に富を相続できる」というものだ。その背景には、団体や個人の私有財産について法の規定が曖昧なことがある。

民法は「個人所有権」について個人的で消費目的のもの、副業経理から派生する生産物、公民が購入あるいは相続したり、贈与を受けたりしたもの(58条)と定め、住宅と家庭生活に必要な様々な家庭用品、文化用品、その他の生活用品、乗用車など(59条)としている。同時に国家所有権の対象には制限がない(44条)との条項もある。

そのため、明確な理由が示されないまま、苦労して築き上げた全財産を国家に奪われることがしばしば発生している。

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そのリスクを少しでも小さくするためには、権力者とのコネを築く方法もあるが、自分自身が権力者になることが最も確実だ。そのために必要なのが栄誉賞というわけだ。

このように、自分自身を最高指導者と何らかの形で関連付けることは、リスク回避に加え、出世への近道にもつながる。例えば、金正恩氏と同じ記念写真に収まることは、「最高指導者に会った証明書」となり、就職や昇進に有利に働く。誰でも会えるわけではないため、政府に「出身成分(身分)がいい」とお墨付きをもらったことにもなる。

最高指導者に対面した「1号接見者」ともなれば、最高人民会議の代議員に選ばれる。

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4種類の栄誉賞のうち、1つでも持っていれば未来が開けることもあり、かつては厳しかった受賞者の基準がゆるくなり、3年前からはカネで売買できるようになったという。秘密は厳守されるため、カネで買った栄誉賞でもバレることはない。

ただし、カネさえあれば栄誉賞が買えるわけでもない。正式に栄誉賞を授与されてもおかしくないほどの功績を上げなければならない。基準がゆるくなったとは言え、かなりの苦労を強いられる。その功績とは、たとえば次のようなものだ。

○銅像、史跡碑、史跡館など金日成氏、金正日氏に直接関係する施設の清掃、管理を1日も怠らず3年以上続ける
○朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に100回以上慰問の品を贈る
○最高指導者に天然物の朝鮮人参などを5キロ、10回以上贈る
○金日成・金正日基金に100北朝鮮ウォン以上を少なくとも2回寄付し証書を受け取る

金日成・金正日基金は本来、二人が葬られている錦繍山(クムスサン)太陽宮殿の維持管理の費用を募るために設立されたものだが、実際には単なる集金マシーンと化している。デイリーNKの内部情報筋は、脱北して逮捕された女性がこの基金に多額の寄付をしたことで、減刑されたと伝えている。賞罰も地位も未来もカネで買えるのが、拝金主義国家・北朝鮮の現実だ。

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