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北朝鮮は新型コロナウイルスの国内での感染拡大を恐れ1月30日、国家非常防疫体制を宣言し、翌日からは中国と繋がるすべての国境を事実上閉鎖し、鎖国状態となった。また、それに先立つ28日から、中国との貿易を全面的に停止した。

金正恩党委員長の指示に基づくものであり、違反して密かに中国に行った者、中国人に接した者に対しては、処刑を含めた極端な処分を下している。

(参考記事:発熱症状を隠した男性を処刑…北朝鮮「新型コロナ」対策の過激度

ところが、そんな「鎖国令」を2回も違反しておきながらお咎めなしに釈放された女性をめぐり、保安署(警察署)と保衛部(秘密警察)が対立する事態となっていると、両江道(リャンガンド)のデイリーNKが伝えた。

この女性は、恵山在住の30代のAさん。脱北して韓国に住む人々が、北朝鮮に残した家族に仕送りする手助けをする送金ブローカーを営んでいる。

(参考記事:韓国の脱北者「59%が北朝鮮に送金」 北朝鮮から韓国へ送金するケースも

恵山市保安署は、国境封鎖と防疫措置を守らせるために住民に密着して統制し、違法行為やよそ者の入境を防ぐために抜き打ちの宿泊検閲(無断で他人を泊めていないかの検査)を行っている。

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保安署は、2月初めに行った宿泊検閲でAさんが所在不明だったことから、翌日の出頭を命じたが、現れなかった。「国境封鎖にいかなる例外も認めるな」との指示を受けている保安署は、Aさんを逮捕して裁判にかけるべきと見て、保衛部に協力を要請し、道党(朝鮮労働党両江道委員会)にも公式に報告を上げた。

保衛部はAさんを逮捕、勾留したが、新型コロナウイルスの検査と隔離を行っただけで、1ヶ月後に釈放してしまった。

それを知った保安署は、伝染病の浸透を防ぐために下された国境封鎖の決定の重大性を知りながら、深刻な違法越境罪を犯した女性を釈放した保衛部に激しく反発した。そして、独自の捜査網を利用して事情を探った結果、Aさんは保衛部の庇護を受け、中国への出入りを繰り返してきたことを調べ上げた。ただし、その目的はわかっていない。

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保安署は、保衛部がAさんを釈放したことに対して「不当な措置」だと反発し、上部に正式な調査を行うべきだと問題を提起するに至った。つまり、保安署は保衛部がAさんからワイロを受け取り、事件をもみ消したと見ているのだ。しかし、保衛部は「やるべきことはやった」との立場を崩しておらず、道党も何の措置も行っていない。

保安署は、この件を追及しようにも「泣く子も黙る」保衛部の権力には勝てず、ほぞを噛んでいるという。市民の間では、道党すら何の措置も取っていないことから、Aさんは保衛部から何らかの任務を命じられて中国に行ってきた「スパイ」だったのだろうとの見方が広がっている。

同じ両江道の金正淑(キムジョンスク)郡では、韓国のスパイとして逮捕された男性が、後に保衛部の秘密情報員であることが明らかになり、軽い処罰で済まされる事例が起きている。

(参考記事:「韓国のスパイ」として逮捕された北朝鮮男性に軽微な判決

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一方で、東隣の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の会寧(フェリョン)では、スパイとして中国に派遣されていた女性が、国境封鎖中にも関わらず中国から呼び戻された上で処刑される事件が起きている。

(参考記事:金正恩の拷問部隊が「女スパイ」処刑…新型ウイルス渦中で憶測広がる