金正恩の拷問部隊が「女スパイ」処刑…新型ウイルス渦中で憶測広がる

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北朝鮮北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)で今月初め、保衛部(秘密警察)の情報員として働いていた中国在住の40代女性が処刑された。ところが、新型コロナウイルスの拡散を防ぐために国境が封鎖されている状況なのに、保衛部がわざわざ中国から呼び戻して処刑したことで、様々な憶測を呼んでいる。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、この女性は2000年代初頭に2回にわたり脱北したものの、逮捕され強制送還され、保衛部に勾留された経験を持つ。その際に、おそらく保衛部から拷問を受けた上で脅迫されたのだろう。「逮捕作戦に協力する」と約束させられた。

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2015年から会寧と国境を流れる豆満江を挟んで向かい合う中国・吉林省の龍井市三合鎮に派遣された。つまり偽装脱北者となってほかの脱北者に接近し、動向を知らせるよう命じられていたのだ。

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女性は三合の中国人の家に住み、近隣住民や脱北者の動向を探っていた。ところが今月初めに会寧に呼び戻され、「国家機密と引き換えにカネを受け取った」との容疑で非公開会議で死刑判決が下され、翌日執行された。

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保衛部は秘密裏に処理したつもりだったのだろうが、同部職員が「ここだけの話」として知り合いの密輸業者に話したのだろう。「国境が全面封鎖されているのに、女性を連れ戻し処刑した」との噂が密輸業者たちから広まってしまったようだ。

処刑理由として浮上したのが「韓国とのダブルスパイだった」「韓国に行こうとしていたのがバレた」の2つの可能性だ。

「現在は国境を行き来できない状態だが、(保衛部は彼女が)韓国に逃げようとしたことを察知し、すぐに連れ戻したという話が出ている。また、中国で(韓国の情報機関に)抱き込まれ、情報を売っていたのがバレたという話も聞こえる」(情報筋)

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保衛部の手法を知っている彼女に韓国に逃げられると、決して知られたくない情報が韓国側に伝わってしまう。そうなれば、自分たちのクビが飛ぶことも充分に考えられるので、さっさと処理したとも考えられる。

ただ、情報筋はいずれも今のところは未確認の情報だとしつつも、情報戦のため保衛部がわざと流した噂である可能性もあると指摘した。当局は、わざとフェイクニュースを流して、自分たちにとって都合のいい世論を形成しようとすることもある。

(参考記事:北朝鮮、フェイクニュースで国内世論を誘導

また、保衛部による手っ取り早い実績作りの犠牲になった可能性もある。

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北朝鮮当局は例年、光明星節(2月16日の金正日総書記の生誕記念日)や太陽節(4月15日の金日成主席の生誕記念日)の前には、関連イベントの開催費用を賄うため、下部機関に普段以上の上納金を求めてくる。

しかし、保衛部は資金難にあえいでいると伝えられている。国境封鎖に加え、中央政府の不正行為の取り締まりが影響しているものと考えられる。

国境に面した地域では、中国キャリアの携帯電話を使った通話、密輸、脱北、人身売買など様々な違法行為が、地域経済を支えていると言っても過言ではない。それを取り締まるはずの保衛部だが、彼らから上納金を受け取り庇護するという共存共栄の関係を続けてきた。ところが、最近になって違法行為、不正行為に対する国の検閲(監査)が非常に強化され、今までと同じようにはできなくなった。

(参考記事:金正恩氏も崩せない、秘密警察と送金ブローカーの共生関係

成績の不振に頭を抱えた保衛部は、女性を韓国とのダブルスパイに仕立て上げ処刑することで実績作りを図ったということだ。しかし、いずれの説も推測の域を出ていない。

ちなみに、両江道(リャンガンド)の金正淑(キムジョンスク)郡では先月、韓国のスパイであるとして逮捕された男性が、保衛部の秘密情報員であったことが判明し、比較的軽い処分で済まされたということもあった。

(参考記事:「韓国のスパイ」として逮捕された北朝鮮男性に軽微な判決