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北朝鮮当局は現在、通常の情報統制策に加え、新型コロナウイルス対策として国境統制を強化している。そんな中、脱北して中国に住む娘と携帯電話で通話した代女性を逮捕した。通話そのものも違法行為だが、今回問題視されたのはその通話内容だ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた事件のあらましは次のようなものだ。

道内の普天(ポチョン)郡に住む女性は先月14日、送金ブローカーと共に山に登った。中国からの送金に関する話を携帯電話でするためだった。通話を終えて山から降りてきたところに待ち構えていたのは、保衛部(秘密警察)10局(電波探知担当)の要員だった。

保衛員は「携帯電話はどこにある」と追及したが、女性は「山に薪を切り出しに行っただけ」だととぼけた。そこで軍用犬を動員して周囲の捜索を行い、草むらの地面の中からビニール袋に入れられ埋められていた携帯電話を見つけ出した。

保衛員は女性とブローカーを逮捕し、郡の保衛部の取調室に連行した。取り調べで女性は「生活が苦しくて、娘に金の無心をしただけ」だとごまかそうとしたが、担当の保衛員は「盗聴で通話内容はわかっている、隠さずに話せ」と脅迫した。恐怖を感じた女性は、通話内容を次のように説明した。

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娘:中国は暮らし向きがよい国。食べ物も多い。
母:だけど、中国では伝染病が広まっている。
娘:だからと言って、(北)朝鮮ほど不潔なわけがない。朝鮮には、病気になっても、診断して治療する能力があるのか。それに朝鮮では(病院まで)20里、30里(8キロ〜12キロ)も歩いていかなければならないが、中国ではそんなに歩く人を見かけない。皆、車やバイクに乗っている。朝鮮で生まれたのが悔しい。
母:そんなこと言っちゃだめ。誰かに聞かれたらどうするの。

それを聞いた保衛員はこう返した。

「祖国を非難する者は人間ですらない。非難したのは娘だが、躾がなっていないのは親の責任だ。だから、祖国を裏切って他人の国に行ってまで祖国を非難するのはないか」

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そして「党は外部(外国)と連絡し、違法行為をする者がいてはならない、一網打尽にせよと言っている、われわれはそれに従って処理する」と告げた。また、「密輸や外部との通話は何であろうと過ちなので処罰する、今回の件は資本主義に対する幻想を巻き起こす点で罪質が悪い」として、重罰が下されることを予告しているという。

外国との通話は、商売や挨拶と言った内容であっても違法行為だが、北朝鮮を批判したため、政治犯扱いとなってしまったということだ。今回処罰されるのは母だが、娘も北朝鮮に帰国すれば処罰されかねない。残された道は、中国で身を潜めて暮らし続けるか、韓国など第三国に脱出することしかない。

現在、不穏当な発言に対する取り締まりが強化されていることを考えると、女性には見せしめとして重罰が科せられる可能性が高い。

(参考記事:拷問で告白させられた北朝鮮「極貧家族」の残酷な運命

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この話は郡全体に広まった。住民は「保衛部は盗聴したと言ったくせに、録音内容を聞かせなかった、書類も見せなかった」として、無理やり自白させるために嘘をついて脅迫したのではないかとの疑惑を口にしている。

このような厳しい対処には国境地域に住む住民から強い不満の声が上がっていると伝えられている。

北朝鮮は多額の予算を投入し、携帯電話による違法通話を取り締まっている。その一方で現地の保衛部は、見逃す代償として定期的に納めさせたワイロを収入としてきた。しかし、不正腐敗根絶キャンペーンの一環として昨年末から中央政府により行われた厳しい検閲(監査)の影響で、それも難しくなっているようだ。

しかし、官民問わず違法行為で生計を立ててきたこの地域にとって、取り締まりの強化は自分の首を絞める行為に他ならない。

(参考記事:「幹部19人処刑の現場」生々しい恐怖に震える北朝鮮国民