拷問で告白させられた北朝鮮「極貧家族」の残酷な運命

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昨年11月、北朝鮮北東部の咸鏡南道(ハムギョンナムド)から木造船に乗って脱北しようとした一家4人が、軍の沿岸警備隊に逮捕される事件が起きたことは、デイリーNKジャパンでも既報の通りだ。

この一家が最近になって、政治犯収容所に送られたことがわかった。

(参考記事:木造船で脱北を試みた北朝鮮一家4人、あえなく捕まる

デイリーNKの北朝鮮内部情報筋によると、一家は反国家犯罪(祖国反逆罪)を犯した容疑で逮捕され、咸鏡南道の保衛部(秘密警察)に身柄を移送された。

一家の父のチャンさんは、保衛部での取り調べで容疑を否定し続けたが、看守や反探課指導員の暴力に耐えかねて、結局は家族とともに脱北するつもりだったと自白した。具体的にどのような暴力を振るわれたのかについて、情報筋は言及していないが、北朝鮮での取り調べで拷問は当たり前のように行われている。

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しかし、水産事業所に多額のワイロを渡して操業許可を得て、船主から船を借りて漁に出たものの、生活が苦しく脱北を選択せざるを得なかったと述べ、政治的な背景はなく生活苦によるものだと主張した。

保衛部も、妻と2人の子どもは海岸で拾ったワカメや魚を売ってその日暮らしをするなど、一家が極貧であることは調べ上げていた。

当局は、脱北して強制送還された人に対して以前ほどは厳しい処罰をしないこともある。しかし、東海岸から船に乗って海に出たことは、状況的に行き先は韓国しか考えられず、いくら貧しい生活をしていたとしても、情状酌量が認められないのだ。

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刑法63条(祖国反逆罪)
公民が祖国を裏切り他の国に逃げたり投降、変質したり、秘密を渡すなど祖国反逆行為を行った場合、5年以上の労働教化刑に処する。罪状が重い場合は、無期労働教化刑または死刑、及び財産没収刑に処する。

チャンさんは裁判で「子どもたちに罪はない、私に付いてきただけだ」と命乞いをしたが、保衛部は「祖国を裏切り南朝鮮(韓国)に逃げようとした者は三代を滅ぼし、根絶やしにしなければならない連中だ、生かせてもらえているだけでも感謝し、革命が勝利するまで、目を見張って変質者どもの末路がいかなるものかをしっかと見よ」などと主張した。

結局、一家4人とも今月9日に咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)にある輸城(スソン)教化所(25号管理所)に送られてしまった。

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この収容所には、特に罪が重いとされる政治犯ら5000人が収容されており、刑期が決められていてもあまりの環境の劣悪さに生きて出るのは非常に難しいと言われている。収容者は、内部にある自転車工場などでの長時間の強制労働を強いられている。

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問題はチャンさん一家だけにとどまらなかった。一家に船を貸し出した船主も無事ではいられなかった。

漁船の操業許可証には、昼間操業と夜間操業の欄があり、捺印があってこそ出港が認められる。船主は捺印の有無や誰が捺印したかを幹部に確認すべきだったが、チャンさんの真面目な人柄を信じて確認を怠ったことで、所有する10隻の船をすべて没収される処罰を受けてしまった。