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北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、昨年末に平壌で開かれた朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会で、金正恩党委員長が次のような発言を行ったと報じている。

金正恩委員長は、内閣は現存の経済的土台を効果的に利用して国家の財政を強化し、生産単位も活性化できるように正しい経済作戦を立て、仕事の手配を綿密に行わなければならず、さしあたって国家経済の命脈と全一性を固守するための活動から内閣の統一的な指導と指揮を保障しなければならないと言及した。

(参考記事:「正面突破戦は革命的な闘争戦略」北朝鮮メディア、正当性を強調

これは、各工場、企業所の管理を内閣にやらせることで、その収益を国庫に入れようとする意図があるものと解釈されている。その一環として行われようとしているのは、電気料金の改革だ。

平壌のデイリーNK内部応報筋によると、今月4日に平壌市内の一部地域に電気と関連した指示が下された。国が各家庭に供給している量を超えて電気を使おうとする場合には、あらかじめ「申請費」を支払えとするものだ。

今までは、各家庭が配電所にワイロを支払い、「盗賊電気」または「コゴリ」(鼻輪の意)と呼ばれる工場や軍隊に回す電気を供給してもらう形を取ってきた。

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新しい制度は、電気を供給する内閣電力工業省傘下の国家電力監督委員会が示した「申請費」の金額1ヶ月50ドル(約5500円)を支払えば、規定量以上の電気が使えるようになる。ただし、半年分の先払いが求められる。これにより今までとは異なり、料金さえ支払えば規定以上の量の電気が合法的に使えるようになる。

国家電力監督委員会の説明は「本来家庭用ではない、国が使うための電力を特別供給するので、費用を別途支払わなければならない」というものだ。

これについて情報筋は、国が電力供給体制を管理した上で、外貨のタンス預金を引き出させて、国庫に収められるようにする一挙両得のシステムだと説明した。

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家庭から受け取ったワイロは配電所の職員から幹部を経て国に上納される形を取っていたが、これを正式な料金として国が正規ルートで受け取る形に変わった。電気を利用する一般消費者の立場からすると、支払うのはワイロだったのが、正式な料金になっただけだ。

平壌市内中心部に住む住民は、以前からワイロを払って電気を使ってきたこともあり、特に何も変わっていないとの反応を見せていると情報筋は伝えた。支払う額は多少上がったが、市内中心部に住む比較的裕福な住民にとっては大きな負担にはならず、公式のお墨付きを得て気が楽になったとのことだ。

北朝鮮当局が定めた月々の一般的な電気料金は、日本円で1円にも満たない33北朝鮮ウォンで、決められた量までなら同料金だったが、近年24万北朝鮮ウォン(約3120円)もする電気メーターを買わせた上で、使った分だけ料金を支払う形に変更した。

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これにより電気料金は290倍〜2900倍の大幅値上げとなった。増収を狙ってことのことだったが、制裁による燃料不足で電力がまともに供給できなくなり、メーターを設置して払うほどの電気料金が発生しない状況に陥っていた。

(参考記事:電気料金「2900倍値上げ」に静かに抵抗する北朝鮮庶民

さて、元ワイロ、今は電気料金として徴収された外貨はどこに行くのだろうか。

別の情報筋によると、国を上げて建設が進められているリゾート「元山葛麻(ウォンサン・カルマ)海岸観光地区」に投入されるとのことだ。

今年の太陽節(4月15日、金日成主席の生誕記念日)に合わせて完成する予定で工事が急ピッチで進められているが、その資金調達のために「一部の平壌市民に比較的高い金額の申請費を策定」(情報筋)した模様だ。

(参考記事:一度に500人犠牲も…殺人的「速度戦」を金正恩氏が止めた理由

当局は、このような制度を平壌市内で実施し、成果が上がれば他の地域に拡大する計画を持っており、北部の両江道(リャンガンド)と慈江道(チャガンド)の道党(朝鮮労働の地方組織)は、試験導入を行う意思を示したと伝えられている。

しかし、いくら高額の料金を受け取ったとしても、そもそも供給できる電気の量に限りがある上に、地方に行けば行くほど、毎月50ドルもの料金を支払える人は限られており、平壌以外の地域で成果が上がるかは未知数だと情報筋は見ている。

(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】「国が電気を供給してくれていた時代に未練はない」