金正恩「最強の監視体制」をすり抜けたある凶悪犯の逃亡手口

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北朝鮮北部で3年前に起きた女性が犠牲になった殺人事件。その容疑者が最近になってようやく逮捕された。コチェビ(ストリート・チルドレン、ホームレス)を装い、路上生活をして追手を逃れていたという。

国内移動の自由すら制限され、世界最強の監視体制が敷かれているとされる北朝鮮で、今回のように長期間に渡って逃亡生活を送る事例は珍しいと脱北者たちは口を合わせる。

逮捕された犯人は、体制の威信を守るためにも、残酷な手口で公開処刑となる可能性が高い。

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平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた事件の概要は次のようなものだ。

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平壌市の東大院(トンデウォン)区域に住んでいた20代のA容疑者は、白頭山英雄青年発電所の建設工事に突撃隊(半強制のタダ働き労働者部隊)の隊員として携わっていた。この発電所の1号機、2号機は2015年10月10日の朝鮮労働党創立70周年に合わせて完成し、3号機は2016年10月に完成した。

(参考記事:金正恩氏がポエムで賞賛する発電所に北朝鮮住民そっぽ

A容疑者は、工事が最終段階にあった3号機の現場に携わっていた3年前、恵山にやってきて20代女性に性的暴行を振るい、殺害した。犯行の詳しい様子について、情報筋は言及していない。Aは犯行直後に平壌に戻り両親に助けを求めた。その後、東海岸の大都市、咸興(ハムン)に向かい、コチェビのふりをして逃亡生活を送っていた。

ところが、Aと同じ東大院区域に住む女性が、咸興の親戚の家を訪ねた際に、偶然Aを見かけ、保安署(警察署)に通報し、先月ようやく逮捕に至った。

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予審(捜査終了後起訴までの追加捜査、取り調べ)の過程で、Aは2年以上コチェビとして暮らし、昨年9.27常務を通じて、身分回復の申請を行い、昨年認められ、新たな住民登録を行ったことが判明した。

Aは、10年近くコチェビ生活をしている、過去にいたところや両親のことなどは思い出せないと適当な理由を述べて9.27常務の担当者を騙し、「公民の義務を果たす」と言いつつ、担当者にワイロを渡して、公民証を作ることに成功した。

この9.27常務とは、1996年9月27日に金正日総書記が出したコチェビを収容せよとの指示に基づいて作られ組織で、コチェビの強制収容と遺体の収容などを行っていた。一時はなくなったが、2009年ごろに復活した模様だ。

(参考記事:【在中北朝鮮国民インタビュー(1)】水害で急増する大人のコチェビ

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平壌に住む両親は、息子のAの逃亡について知らないとシラを切り続けていたが、予審で息子を助けた事実が判明した。おそらく、それなりの地位と財力を持った人なのだろうが、詳しいことはわかっていない。

Aは、殺人と強姦の罪で処刑され、両親は平壌から追放されるだろうと情報筋は見ている。

北朝鮮では、女性が犠牲になる凶悪犯罪が跡を絶たない。咸鏡北道(ハムギョンブクト)では今年9月、性的関係を迫ったが断られたことに腹を立て、女性に性的暴行を振るった上で殺害した容疑で、30代男性が逮捕されている。

(参考記事:「犯人を死刑に」ある性犯罪に憤る北朝鮮世論の歪んだ背景

また、地位を利用して女性に対して性的暴行を振るう事例は日常茶飯事だ。

(参考記事:「性的虐待を受けた女性兵士が男性宅に押しかけて…」北朝鮮軍の闇