「犯人を死刑に」ある性犯罪に憤る北朝鮮世論の歪んだ背景

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昨今の国際社会の制裁による経済難で北朝鮮の治安が悪化し、犯罪が増加していると伝えられる中、北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)で、20代女性が殺害される事件が起きた。

現地の情報筋によると、事件が起きたのは9月下旬のこと。咸鏡北道の穏城(オンソン)の中心部から江岸里(カンアンリ)を結ぶ道路沿いの貯水池で、近隣住民が体が半分水に浸かった状態の女性の遺体を発見した。

女性は23歳で、穏城の中心地で教養員養成教育を終えて帰宅途中だった。保安署(警察署)は、現場で確保した証拠と、商店での聞き込み捜査を行った上で、容疑者を特定し、逮捕した。

逮捕されたのは、在北朝鮮華僑の30代男性。容疑者は、通りで見かけた被害女性に声をかけ、自分が乗っていたバイクに乗せた。途中で道路から外れて人気のないあぜ道に入り、Aさんに性的暴行を加えた上で殺害、遺体を貯水池に遺棄した。二人の間に面識はなかったという。

情報筋は、保安署関係者の話として、事件の概要を次のように説明した。

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「バイクに乗せて行く途中で商店に立ち寄ってビールとつまみを買って飲みながら数回に渡って性的関係を要求したが、拒否されて逃げられそうになった。それで頭に来て性的暴行を加え殺害した」

逮捕された容疑者は、北朝鮮で生まれ育った華僑だ。差別される存在である一方で、中国国籍を有していることから北朝鮮と中国を自由に行き来し商売を行い、比較的豊かな暮らしをしてきた。

容疑者は取り調べで、複数の余罪があると自白し、「金持ちの華僑」であることを見せつけて女性を誘惑し、性的暴行を加えてきたことが明らかになった。

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今回の容疑者が華僑であったことが知れ渡り、現地住民の華僑に対する感情が悪化している。北朝鮮国民の間には、以前からあった偏見、根強い反中感情に加え、比較的自由に北朝鮮と中国を行き来し、商売を行って裕福な暮らしをしてきた華僑に対する妬みが入り混じった感情が存在する。とはいえ、北朝鮮の華僑は決して特権階級ではなく、中朝関係が悪化するたびに「スケープゴート」となり不利益を被ってきた。

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今回は、何らかの事件のスピン・コントロール(権力者などの問題を隠すために、別の問題を騒ぎ立て目線をそらさせる行為)とは異なるものの、「手口が残忍で、一度や二度のことではないので死刑にすべきだ」との声が多いという。

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一方で、「親が金持ちなので、なんとかして減刑を試みるだろう」との見方もある。これほどの重大犯罪を犯しても、大枚を叩けば死刑を免れ、教化所(刑務所)送りになっても、さらにカネを積めば病気などを理由に釈放される可能性があるからだ。

(参考記事:「量刑はワイロで決まる」北朝鮮の常識