観光産業の活性化に力を入れている北朝鮮が、特大級の大風呂敷を広げた。2017年の外国人観光客の誘致目標数は、なんと100万人。2020年には200万人を目指すという。

馬息嶺スキー場/2015年1月12付労働新聞より
外国人観光客誘致と外貨稼ぎのために建設した馬息嶺スキー場/2015年1月12付労働新聞より

大韓貿易投資振興公社(KOTRA)が発表した「北朝鮮の観光市場の現状」と題した資料によると、ここ数年、北朝鮮を訪れた外国人観光客数は年間8万人規模だ。

観光で成功のラオスと比較すると…

資料によると、北朝鮮を訪問した中国人観光客の数は2012年4500人、2013年2900人、2014年1500人となっている。一方、中国国家旅遊総局の資料によると、2011年13万人、2012年23万7000人とKOTRAの統計とは大きな開きがある。

12日の朝鮮中央通信は、北朝鮮国家観光総局のチョ・ソンゴル局長と世界観光機構のタレップ・ラファイ事務総長が了解覚書を交わしたと伝えた。内容は明らかになっていないが、世界観光機構は観光振興を目的とした国連の機関であることを考えると、北朝鮮の観光業活性化に関するものと思われる。

さらに、北朝鮮当局は平壌国際空港の新ターミナルをオープンさせ、サイクリングツアー、植樹ツアー、ボランティアツアーなど様々な観光商品を開発し、外国人観光客の誘致を図っている。

しかし、北朝鮮の目指す「観光客100万人誘致達成」は、非常に困難との見方が大勢だ。その理由を、北朝鮮と政治、経済面で類似点が多いが、なぜか観光業で大成功を収めているラオスの例から探ってみることにしよう。

ラオスはミャンマー、東ティモールと並ぶ東南アジアの最貧国だ。1975年に内戦が終わり、社会主義政権が樹立し、計画経済が導入されたが、すぐに立ちゆかなくなり、1986年から改革開放に転じた。

正恩氏の「趣味」に偏り

しかし、元々製造業が非常に立ち遅れていた上に、人口が少なく内陸国という地の利の悪さから外資の誘致が難しく、最貧国の状態が続いていた。

そこでラオス政府が、目をつけたのが観光業だった。

自然に囲まれたラオスの古都、ルアンパバーン。世界文化遺産に指定されている。(画像:Saipal)
自然に囲まれたラオスの古都、ルアンパバーン。世界文化遺産に指定されている。(画像:Saipal)

「シンプルに美しい」と自国の観光資源を宣伝。豊富な自然を利用したエコツーリズム、王宮、寺院などの世界文化遺産を前面に押し出して観光PRを行ってきた。これが功を奏し、2008年にニューヨークタイムズが選ぶ53のオススメ観光地の1位、2013年にはヨーロッパ観光通商協議会が選ぶ「世界一の観光地」に選ばれた。

世界が高く評価したことから、ラオスを訪れる外国人観光客数は年々増加。1990年にはわずか1万4000人だったが、2011年には272万人、2013年には377万人と13年間で約270倍と驚異的な増加を見せた。

観光業で得られる収入は5億ドルを超えている。同国の1人あたりのGDP(購買力平価)は、わずか4986ドルであり、いかに莫大な観光収入を得ているのかがわかる。(IMF調べ、タイ14383ドル、日本37389ドル、北朝鮮1800ドル)

ラオスは、観光業の振興にあたってインフラ整備は行っているが、巨大な観光施設を建設したわけではない。元からあった自然や文化遺産を新たにパッケージングして魅力ある観光地としてPRを行い、マーケティング調査に基づいて、「シンプルに美しい国、ラオス」を自由に見てもらえるようにしただけだ。

一方の北朝鮮は、金正恩氏の趣味と言ってもいいようなスキー場などの大規模リゾート施設の建設ばかりに投資が偏り、外国人観光客が北朝鮮に望んでいることをあまり考慮しているとは言えない。

見せたいものだけ見せる

北朝鮮を訪れる外国人観光客のうち、圧倒的に多いのは中国人だ。彼らが北朝鮮に求めるのは「60年代の中国のような景色」だ。

北朝鮮の至るところにある政治スローガンは、中国人には郷愁を誘うものだ。
北朝鮮の至るところにある政治スローガンは、中国人には郷愁を誘うものだ。

しかし、北朝鮮当局は、金正恩第一書記肝いりの観光事業「馬息嶺スキー場」に飽き足りず、ペゲ峰スキー場の建設を進めている。こうした北朝鮮当局の的を外れた観光政策に対して韓国国民大学のアンドレイ・ランコフ教授は、一刀両断する。

わざわざスキーをするため北朝鮮まで行く旅行客はいないだろう。北朝鮮は世界の需要がまったく読めていない

北朝鮮の観光政策は、「観光客が北朝鮮に何を求めているか」を全く考慮せず、「見せたいものだけを見せる」という旧社会主義国が行っていた観光スタイルにとらわれている。

その最たる例が、外国人観光客にとって最も人気のある見どころの一つ「市場」だ。

ラオスを話しにもどそう。ラオスの古都「ルアンパバーン」で王宮、寺院、自然と並ぶ名物の一つが、毎晩開かれるナイトマーケットだ。町の目抜き通りを数百メートルに渡って、周辺の村人が持ち寄った民芸品やお土産物を売る市場が広がる。

ルアンパバーンのナイトマーケット(画像:ラオス政府観光局)
ルアンパバーンのナイトマーケット(画像:ラオス政府観光局)

ところが、北朝鮮では羅先経済特区を除き、市場には連れて行ってもらえない。また、写真撮影は厳重に禁じられているというのも、観光客には理解しがたい。昨年、北朝鮮を訪れた観光客は次のように語った。

「ガイド(案内員)とともに平壌市内の売店に行ったが『絶対に撮影しないように』と何度も念押しされた。理由を聞いても答えは要領を得なかった。なぜ店の撮影がダメなのかさっぱりわからない」

平壌地下鉄駅構内の売店(本文とは関係ありません) ©Matt Paish
平壌地下鉄駅構内の売店。なぜか撮影は厳しく規制される。(画像:Matt Paish)

北朝鮮の案内員は、旅行ガイドと旅行者の監視を兼ねていることもあるが、「案内員がついて回る」スタイルも外国人観光客には、すこぶる評判が悪い。

「ガイドからは『一人で自由に歩き回って迷子になったら大変』などと言われて、一人で行動しないことを暗に要求される。ホテルの敷地内から外に出ることもはばかられる。平壌市内ぐらい自由に歩き回れるようにしてほしい」(日本人観光客)

外国人観光客が北朝鮮に何を望んでいるかを把握し、それに沿った観光開発を行うことが観光業活性化に必須だ。現状のままで観光客100万人誘致など夢のまた夢だ。

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