本格的な冬が到来した北朝鮮。冬が深まるにつれ、農民の心配も深まっている。相次ぐ自然災害で作況が悪く、収穫物が手元に残らなくて借金を返せないからだ。その実情を、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

北朝鮮の農民の多くは毎年春、トンジュ(金主、新興富裕層)から、秋の収穫後に利子を付けて返す条件で、穀物を借りる。しかし、今年は作況が悪く、国から受け取れるはずの分配も受け取れていないため、返せない。すっからかんなのに借金取りから「返せ」と凄まれても、返しようがない。「収穫がダメになったのに、どうしろというんだ」と開き直る人もいるという。

「借金取りの立場からすると、財産を奪ってでも取り戻したいところだろうが、農民の暮らし向きは、棒を振り回したとしても何もひっかからないほどないないづくしだ」(情報筋)

なぜ、このようなことになってしまうのか。それは国の穀物生産計画がデタラメだからだ。

国は昨年の収穫高を元に、今年の穀物生産計画を立て、各農場にノルマを課す。ところが、昨年の収穫高というのは、虚偽報告されたその前年の収穫高を元に策定されているため、現実とかけ離れた数字だ。しかし、国はノルマ分をきっちり搾り取る。農民の手元には何も残らないため、穀物を借りるしか生き延びる術がないのだ。それも、公の金融制度が事実上存在しないため、高い利息を払って高利貸しから借りるしかない。

(参考記事:利息200%の借金地獄で生きる北朝鮮の農民たち(上)

そんな暮らしに耐えきれなくなった農民は、村を捨てて都会に働きに出てしまう。そうなれば農場で働くひとは減り、収穫はさらに減ってしまう。

(参考記事:「おらこんな村いやだ」と故郷を捨てる北朝鮮の農民たち

穀物を貸し付けたトンジュの方も弱り顔だ。

平安南道の平城(ピョンソン)市陽地洞(ヤンジドン)に住むある商人は今年の春、複数の農民にコメを貸し付けた。本来なら10トンを返済してもらえるはずだが、今のところわずか2トンしか受け取れていない。

このままでは元を取るどころか大損しかねないため、自転車に乗って周辺の農村を周り、農民を訪ねて催促して回っているとのことだ。

ちなみに、現金ではなく穀物をやり取りするのはそれなりの理由がある。北朝鮮の刑法は第113条でカネを貸して利子を取る行為を禁じていて、違反者は最高で労働教化刑(懲役)3年の刑となる。しかし、穀物ならば言い逃れできるというわけだ。

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