「借りなければ死んでしまう」農場幹部が明かす

金正恩党委員長が北朝鮮の指導者となり、年末で丸5年を迎える。その間、北朝鮮の国営メディアは、まばゆく発展する首都・平壌の姿をこれでもかと誇示してきた。高層マンション、巨大遊園地、ファストフード店…現地に足を運んだ人の報告ともあいまって「ああ、北朝鮮経済も発展しているんだな」との感想を持った人も少なくないだろう。

たしかに、建物はハリボテではない。平壌の経済発展は認めざるを得ないだろう。だが、旅行者の目が届かない農村は、依然としてズタボロである。農民は「底なし沼」としか呼びようのない、絶望的な経済状況の中で暮らしている。これまでの取材成果と、北朝鮮の元農村幹部で脱北者のであるA氏のインタビューをまとめて紹介する。

カネは貸さない高利貸し

A氏は、北朝鮮北部の農場で、作業班長を10年ほど務めてきた。韓国に来て日が浅いため、具体的な出身地名は伏せるが、農村の状況を知り尽くしたベテランだ。90人ほどの農場員を率いて、ジャガイモを栽培していた。

その農場では「2月以降、6月になるまで食べるものが無く、半数以上が1:3の高利貸しを利用して生き延びている」というのだ。

北朝鮮の農村の高利貸しは、日本のように現金を扱うのではなく、「食糧を貸す」という独特のビジネスモデルで商っている。

「1:3」というのは、例えば100キロのトウモロコシを借りた場合、収穫時に300キロ分を返すということである。年間利息200%、ヤミ金も真っ青の超高利である。しかし、農民たちにとっては命綱のような存在で、「高利貸が無ければ飢え死にしてしまう」とA氏は語る。

なぜこのようなことが起きるのだろうか。

簡単にいうと「収穫時に、国が根こそぎ持っていってしまうから」である。

A氏の作業班では、年間計画(正式には「人民経済計画」)として、生産量1000トンが国から割り当てられていた。その中から◇軍糧米250トン、◇働く農場員への配給(分配)180トン、◇都市部住民への配給450トン、◇来年の栽培のための種ジャガイモ120トン、◇飼料40トンといったように、収穫物の行き先が決まっていた。

だが実際の生産高は、「500トンにも満たなかった」(A氏)。

虚偽報告の悪循環

この中でやりくりをしなければならないのだが、◇軍糧米250トン、◇種ジャガイモ120トン、◇飼料40トンなどは最優先課題として、必ず国に納めなければならない。すると農場に残るのはわずか数十トン。これを農場員に分配したところで、食べていくには全く足りないのである。

そうして、農場員は「借金」をして食いつなぐことになる。

「そもそもの国家計画がおかしいのでは」との声が聞こえてきそうだが、その指摘はまったく正しい。ただ、そういった理屈は北朝鮮では通用しない。

A氏はカラクリをこう明かす。

「国はわれわれの作業班の土地を100と見積もっているのですが、実際はその半分にも満たないんです。正確な測量もせずに、朝鮮労働党の担当職員が上部に良く見せようと、無理な計画を申告する。そのうえ、収穫時に『計画を達成できなかった』というと出世にも響くし、検察に告発されることもあるので『計画を超過達成した』となるんです。そうすると、来年の計画は『さらに上を目指す』ことになる。こうしたことが際限なく繰り返されてきた結果、今の現実があるんです」。(つづく)

【連載】利息200%の借金地獄で生きる北朝鮮の農民たち(下)

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