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北朝鮮の鉄道事情は劣悪なことで知られている。金日成主席は全国の鉄道の電化を進めたが、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」のころからまともな電力供給ができなくなってしまい、時刻表通りの運行が望めない状況となってしまった。

例えば首都・平壌から北部の恵山(ヘサン)までは、時刻表通りなら23時間ほどで到着するのに、実際には10日もかかった事例などが伝えられている。

(参考記事:東京から岡山まで10日!? 電力難が招く北の「鉄道崩壊」

かつてと比べて幾分改善したとは言われているものの、遅延が日常茶飯事であることに変わりはない。だが、その状況を打ち破る新たな列車の運行が始まったと、平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

運行が始まったのは、平壌と中国との国境に面した新義州(シニジュ)間225キロを結ぶ「ポリ列車」だ。この区間は、最も速い北京行きの国際列車なら5〜6時間ほどで走るが、一般列車なら時刻表通りでも9時間、運が良ければ12時間、ひどい場合には2日かかる。

ポリ列車の所要時間は不明だが、情報筋の話では一般列車の2倍のスピードで走るとのことだ。スピード維持の秘訣は、その運行方式にある。

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この列車、客車を牽引するディーゼル機関車は鉄道省が提供し、機関車の燃料はトンジュ(金主、新興富裕層)が提供する合弁経営の形をとっている。利益は7対3で分配することになっている。ちなみに「ポリ」とは「儲け」を意味する朝鮮語だ。

このポリ列車、ただ単にスピードが速いだけではない。ビール、ワイン、新鮮な果物などが提供されるなど、サービスも破格だ。また、北朝鮮ならではのメリットもある。

「一般列車では列車保安員(鉄道警察)による検問が頻繁に行われ、ワイロを要求されることも多いが、ポリ列車では列車保安員が乗客の便宜を最大限に図る」(情報筋)

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手厚いサービスや気遣いは、客層が高級幹部やその家族であるため、何か間違いを起こせば大変なことになってしまいかねないためだ。

乗客間でもそのような心理が働く。若者が列車に乗ると、別の乗客からにこやかに「どうしてこの列車に乗れるのか」「君のお父さんはどんな仕事をしているのか」などと尋ねられるという。つまり、自分より位の高い幹部の子どもである可能性を考え、粗相をすることのないように、まず先に相手の親の身分を確認するわけだ。

下車する時の様子も、一般列車とは異なる。ホームで部下やポーターなどが待ち構える中で、乗客は権力者であることを見せつけるかのようにドヤ顔で下車するのだという。北朝鮮には見栄っ張りでプライドが高い人が多いと言われているが、そんな虚栄心を満たしてくれる「特別な列車」と言えよう。

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速く移動したいだけならタクシーが存在するが、特権階級にとってはもはや満足のいくものではないようだ。

(参考記事:北朝鮮のオヤジは「タクシー運転手」が夢の職業

もちろん、ポリ列車の運賃は高い。平壌から新義州までは40〜50万北朝鮮ウォン(約5200〜6500円)。一般列車の10倍以上で、庶民には高嶺の花だ。

このように鉄道運営者が民間業者に線路を貸し出し、特別列車を運行させる事例は北朝鮮に限ったことではない。ベトナム、スリランカなどでも富裕層、ビジネス客、外国人観光客をターゲットにした、民間業者が運行する列車がある。北朝鮮でも、過去に同様の列車が運行されたことがあるが、事故など様々な事情で長続きしなかった。

(参考記事:北朝鮮「夢の超特急」…相次ぐ事故で運行中止に

最近では、急増する中国人観光客を輸送するための特別列車が運行されてもいる。

(参考記事:急増する中国人観光客を「軍用装備」で輸送する北朝鮮