「トゥルチュク」(和名クロマメノキ)。ブルーベリーの一種で、北朝鮮では天然記念物に指定されているが、大量に採取され、酒、ゼリー、ジャムなどに加工、輸出されている。

海産物は、国際社会の対北朝鮮制裁で輸出ができなくなっているが、農産物は対象外なので、外貨稼ぎにもってこいのアイテムだ。

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産地では、毎年旬になれば政府や貿易会社と住民の間で熾烈な「トゥルチュク」争奪戦が繰り広げられてきたが、今年も様々なトラブルが起きているとデイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。その現場は、北部山間地の両江道(リャンガンド)三池淵(サムジヨン)だ。

(参考記事:北朝鮮当局と庶民が「ブルーベリー」めぐり熾烈な争奪戦

当局によって動員された貿易会社の関係者は、山の麓に車を待機させ、地元民が採ってきたトゥルチュクの実を買い取っているが、天秤の目盛りをごまかしたり、嘘をついて買い叩こうとしたりして、トラブルが絶えないという。

「貿易イルクン(関係者)は、トゥルチュクの実の重さを測るときに不利な条件を提示し、それに従うよう強いてくる。物量が多ければ『車がないから買い取りは明日になる、安くてもいいなら今日中に買ってやる』『鮮度が落ちれば値段が下がるがそれでもいいのか』などと、半ば脅迫して少しでも買い取り価格を下げようとしてくる」(情報筋)

地元民はおとなしく従うわけがない。激怒して「そんな値段では、経費にしかならない」「少しでも家族のためにと思ってやってきたのに、国は自分たちの利益だけ確保しようとするのか」などと強く反発する。また、「やはり国にはカネがないようだ」「国が商売なんかしててもいいのか」などという声も聞こえるという。

トゥルチュクが生えているのは、大抵人里離れた山奥だ。自宅から行き来するのは難しいため、山の中に掘っ立て小屋を建てて、寝泊まりしてクロマメノキの実を採りに行く。そのため、経費が馬鹿にならないのだ。当局は地元民にトゥルチュクの実を採るノルマを割り当てているが、超過達成分は自分のものにしてよいと認めているため、争奪戦は激しく、より多くの量をより高く売らなければ儲からない。

面倒だからとノルマをワイロでもみ消す人もいる。

「こういう事情をよく知っている人は、ワイロでトゥルチュク採取の動員を免除してもらう。山に入るのは大抵貧しい人だが、そんな人たちにしわ寄せが行っている」

このような争奪戦はトゥルチュクに限らず、松の実や、ウチワドコロ、ヨロイグサといった薬草などを巡って度々起きている。