北朝鮮の金正恩党委員長が進めている、革命の聖地「三池淵」(サムジヨン)の開発計画。国営の朝鮮中央通信は先月10日、金正恩氏が現地を訪れ、農業施設や建設現場を集中的に視察したことを伝えた。

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この訪問が行われた後、地元住民に対して特別配給が行われたと、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

それによると、三池淵とその隣の大紅湍(テホンダン)、白岩(ペガム)など、金正恩氏が訪れた地域の住民に対して特別配給を行うことについて、朝鮮労働党の指示が下された。その中身は、10日分の食糧を2回に分けて合計20日分というものだ。

かつて国家の配給システムが機能していた時代、北朝鮮国民には1度に15日分の食糧が配給されていた。今回は、金正恩氏の訪問に合わせた「贈り物」という形だが、一時的にせよ食糧配給が復活した形だ。ただし、人口の多い都市部は配給の対象エリアから除外された。

両江道の道庁所在地である恵山は、中国の吉林省長白朝鮮族自治県と川を挟んで向かい合っており、貿易の中心地となっている。そのため商業が発達し、この地方では豊かな地域として知られている。また、三池淵はかつて金日成主席が革命活動を行った「聖地」で、開発も進んでおり、他と比べれば比較的豊かだ。

一方、隣接する大紅湍は、金正日総書記の提唱したジャガイモ革命の本拠地だが、それ以外に特産品はない。非常に貧しく、家を捨てて逃げる人も少なくないという。白岩の状況も似たり寄ったりだ。

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これらの地域は人口が少なく、交通も不便なため、商売をしたところで大した儲けにはならず、人々はわずかばかりの食糧で延命しているような状況だ。それだけに、配給を受け取った地域住民は大興奮している。

受け取った食べ物の量は昔と比べるべくもないが、「夢のようだ」「20日分だけでも途切れずにもらえればどれだけいいだろうか」と大喜びだという。

「地域住民は国のために勤労動員に応じてタダ働きを続けてきたが、(それを忘れたのか)タダでもらえたと思い、食糧の入った袋を見つめて満足げな様子だった。ある家では大人が大喜びしている様子を見た子どもたちが、袋の上で飛び跳ねて喜んだ」

大紅湍郡では、幹部が「中国から続けざまに食糧を運び入れていたので、配給がもらえるかもしれない」と語っていたこともあり、地域住民の間では今後への期待も高まっている。ただ、昔からずっと国に騙され続けてきたことを覚えている人も当然いて、配給は今回限りで、来月には食糧が底をつくかもしれないと心配する向きもあるという。