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北朝鮮当局は昨年10月から、今年10月に実施予定の人口調査(国勢調査)に向けて示範調査(予備調査)を行っている。北朝鮮の人口調査は、単に人口、年齡、収入などを調べ、今後の政策立案などに役立てるだけでなく、思想や移動統制の意味合いも持っている。

江原道(カンウォンド)のデイリーNK内部情報筋によると、地域の人民班(町内会)の班長が調査を担当している。「定期的に行う人口の調査」との説明だが、住民は「いなくなった人が多いから調査しているのではないか」と訝しげに見ている。

両江道(リャンガンド)の内部情報筋も、最近、保安員(警察官)が人民班長と共に家々を回り、調査を行っているが、長期間家を空けている人、行方不明になった人、亡くなった人がいる場合には「より詳しい調査が必要だ」として何度も訪ねてくるという。

「家族の中で理由もなくいなくなった人がいれば、(保安員や人民班長は)『渡江』したのではないかと疑ってかかる」(情報筋)

渡江、つまり川を渡ることは脱北を意味する。家族全員がいなくなった場合、親しい人を訪ねて根掘り葉掘り聞き出そうとする。

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北朝鮮の北部は、この数年の自然災害などで行方不明になったり、それをチャンスと見て脱北したりする人が続出したが、そのときにも北朝鮮当局は一部で人口調査を行っている。

実際、現地の情報筋は次のように伝えている。

「死者、行方不明者があまりにも多い上に、データの間違いも多く、完璧な調査は無理だろう。また、損傷が激しく身元の確認ができない遺体も多いので、死んだことにしてもらえれば、脱北しても追手は来ない」(情報筋)

(参考記事:死者になりすまして脱北?…北朝鮮の水害被災者

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「いつどのような経緯でいなくなったのかわからない場合には、住民台帳に『行方不明』と書き込まれる。そのような人が多いため、該当単位(保安署<警察署>の住民登録課)は人口調査が必要と考えたのだろう」(同)

北朝鮮はそもそも、国際社会からの支援金目当てに人口調査を行っているとの見方もある。

北朝鮮外務省のハン・サンリョル次官は昨年6月、米ニューヨークの国連人口基金(UNFPA)本部を訪れ、調査費用600万ドル(約6億6700万円)の支援を要請した。2008年に行われた人口調査でも、北朝鮮はほぼ同額の支援金を受け取っている。韓国政府は支援金の供出を検討する方針を明らかにしたが、その後の動きはない。

(参考記事:国勢調査も小銭稼ぎのチャンス…北朝鮮に蔓延する拝金主義

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また、8月に行われる南北離散家族再会と関連付けて人口調査を行っているとの見方もある。南北関係の改善で、再会事業が今後も行われることに備えたものということだ。

(参考記事:北朝鮮が「南北離散家族再会」の対象者を思想で徹底選別