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共産圏では交通インフラの整備において、道路より鉄道を優先する傾向が強かったが、北朝鮮も例外ではなかった。北朝鮮は、鉄道に莫大な投資をして全路線の8割以上を電化した。

ところが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を前後して、鉄道の機能が半ば麻痺状態に陥った。深刻な電力難のせいだ。北朝鮮国民は鉄道に見切りをつけ、「ソビ車」と呼ばれる個人経営の乗り合いバスを移動手段とした。しかし最近になり、「オワコン」と思われていた鉄道が復活の兆しを見せている。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋が米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによると、北朝鮮の鉄道の一部区間で、ディーゼル機関車が牽引する列車の運行が始まった。

軍事用のディーゼル機関車を民生用に転換し、トンジュ(金主、新興富裕層)が調達した燃料で運行するというものだが、そのひとつが北朝鮮の物流の拠点、平城(ピョンソン)から順川(スンチョン)を経て無盡台(ムジンデ)までの50.8キロを結ぶ通勤列車だ。

かつては1日2回、列車が運行されていたが、「苦難の行軍」以降は電力難で運行できなくなったため、地域住民はソビ車を利用していた。

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ソビ車を所有するトンジュが大儲けする様子に刺激されたのか、地域の鉄道局はディーゼル機関車を利用して列車の運行を再開することにした。しかし、先行きが明るいとは言えない。

2010年にもディーゼル機関車の列車を運行したことがあったが、料金が高すぎて乗客の確保に失敗。ソビ車との競争に負け、廃止されてしまった。ディーゼル機関車の列車は、従来の列車に比べて運賃が20倍も高いとされる。

最近においても、平壌と恵山を結ぶ路線でもディーゼル機関車による試験運行が行われた。運賃は国定価格の6500北朝鮮ウォン(約84.5円)を大きく上回り、15万北朝鮮ウォン(約1950円)にも及ぶ。ここでもやはり集客に失敗し、トンジュが投資を引き上げてしまったため、従来の電気機関車による運行に戻っている。

(参考記事:北朝鮮の新興富裕層「トンジュ」が牛耳る鉄道網…運賃は中国の3倍

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当局は2015年にも、この区間で同様の試みを行っているが、そのときの運賃は9万ウォン(約1260円)、立席でも7万ウォン(約980円)だった。

(参考記事:10日かかっていた東京-岡山がたったの1日に!? 北朝鮮に夢の超特急登場!庶民「運賃高すぎ」

別の情報筋によると、電力難が深刻な北朝鮮では、ディーゼル機関車が最も効率的な交通手段であるとされ、軍用列車や特別列車はディーゼル機関車が牽引している。平城のトンジュは鉄道局にワイロを渡して、軍需用のディーゼル機関車をレンタルし、貨物列車の運行をビジネスにしている。

「わが国(北朝鮮)の経済を発展させるには、何よりも老朽化した輸送手段の問題から解決しなければならないが、そのためには鉄道部門で革命を起こさなければならない。発電所の整備事業、老朽化した線路の補修、新型電気機関車の導入など、やるべきことが一つや二つではない」(情報筋)

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ちなみに、通勤列車の終点の無盡台(ムジンデ)駅のすぐそばには、炭鉱とウラン鉱山に加えて、14号管理所と18号管理所が存在する。「管理所」とは北朝鮮の恐怖政治の象徴である「政治犯収容所」のことだ。列車の運行と、鉱山や管理所の立地がどのような関係があるのかは不明だ。

(参考記事:9歳の少女は倒れた家族を養うため、毎日十数キロを歩き食べ物を盗んだ…北朝鮮収容所の現実