咸興市内を走る狭軌の通勤電車©Clay Gilliland
咸興市内を走る狭軌の通勤電車 ©Clay Gilliland

鉄道より歩いた方が早い北朝鮮

北朝鮮の電力難は冬季に最高潮に達する。発電量のかなりの部分を水力発電所に依存しているが、元来降雪量が少ない地域なので需要を満たすほどの発電ができないのだ。

また、元々少ない降雪がさらに少なくなれば雪解け水が減り、そこに春の雨不足が加われば北朝鮮の電力事情は踏んだり蹴ったりの有り様と化する。

電力難で鉄道の運行に重大な支障をきたしている件はデイリーNKでも何度も報じている。東京~岡山間の距離に相当する平壌~恵山(ヘサン)間が10日以上かかったり、清津(チョンジン)~新義州(シニジュ)間が半月かかったりと歩いて行ったほうが早いような状況だった。

【参考記事】
東京から岡山まで10日!? 電力難が招く北の「鉄道崩壊」
清津から新義州まで汽車で半月

早くて暖かいスペシャル列車。でも高い!

それを解決するスペシャル列車がこの度北朝鮮に登場した。それはディーゼル機関車がけん引する列車だ。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、ディーゼル列車は昨年12月より平壌から恵山、新義州、豆満江(トゥマンガン)間を結ぶ幹線列車で週1便のテスト運行を開始し、定時運行がなされている。今後は全国のすべての路線への投入が計画されている。

平壌~恵山間は時刻表通りだと23時間13分、平壌~豆満江間は25時間45分で走破する。各客車に石炭ストーブも完備されていて車内はポカポカだ。

事情は異なれど一度電化した路線にディーゼル列車を走らせる例は日本にも存在する。例を挙げると既に廃止されたが名鉄八百津線、三河線は運航コスト削減のために電化区間にディーゼルカーを投入していた。今回のディーゼルスペシャル列車の登場は合理的な選択と言える。

しかし、問題は運賃。恵山行の場合、電気機関車がけん引する一般列車は1200ウォン(約17円)だが、ディーゼル列車は9万ウォン(約1260円)、立席でも7万ウォン(約980円)もする。9万ウォンはコメ22キロ、トウモロコシ50キロが買える大金だ。

それに加えて地方住民が平壌に入るために必要な「特別証明書」と「承認番号」を得るにはさらに大枚を叩かなければならない。

飛行機ならさらに速い!

さらに金がある人にとっては飛行機という選択肢もある。

外国人観光客向けの高麗航空国内線航空機の機内©Uri Tours
外国人観光客向けの高麗航空国内線航空機の機内 ©Uri Tours

北朝鮮の高麗航空は昨年7月から平壌から三池淵(サムジヨン)、漁郎(オラン)、咸興(ハムン)を結ぶ3路線を就航させた。3機の機体を利用してそれぞれ週2便運行されており、予約状況に応じて40席、80席、106席の機体が運航する。

運賃は三池淵行きが往復86ドル(約1万100円)、漁郎行きは75ドル(約8880円)。就航当初は92ドル(約1万900円)、83ドル(約9800円)だったが、値下げされて代わりに片道料金が70ドル(約8280円)、60ドル(約7100円)に値上げされた。

これは「一生に一度飛行機には乗ってみたいけど往復料金を負担するのはしんどい」と片道だけ乗る人が多く乗客確保のため料金値下げに踏み切ったものと思われる。

スペシャル列車と国内航空路線の登場は金さえあればなんとかなる最近の北朝鮮の格差社会の象徴とも言えよう。

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