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世界銀行が今年発表した資料によると、北朝鮮国民の平均寿命は68.9歳(2010年)から、71.6歳(2016年)となった。以前に比べ、食糧事情が改善したことが影響しているものと思われる。

健康で長生きする人が増えるのは望ましいことだが、喜んでばかりもいられない状況がある。高齢者の雇用が社会問題になりつつあるのだ。男性は60歳、女性は55歳で定年退職するが、その後にもらえる年金の制度が有名無実なものとなっているのである。

平壌のデイリーNK内部情報筋によると、都会では定年退職した人、特に男性が老後の生活資金を稼ぐための再就職先を求めているが、仕事はなかなか見つからないという。農村なら、山羊や豚のエサやり、農作業などいくらでも仕事があるが、都会ではそうはいかない。

鍵や靴の修繕など特殊技術を持っている人を除くほとんどの男性が、やることがなく公園に集まって将棋やトランプに興じて暇つぶしをしている。生活に困窮している人は、煙草の吸殻拾いやマンションの警備員の仕事をしてなんとか暮らしているが、得られる報酬は雀の涙ほどだ。「子どもの役に立てず申し訳ない」との思いから、建設工事の資材の番をする人もいるという。

朝鮮では大事にされるはずの老人が、なぜ経済的困窮に追いやられているのか。

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北朝鮮の社会主義労働法は、定年退職した人に年老者年金を支給することを定めているが、ほとんど意味のないものとなっている。北朝鮮の男性は、国営企業や国の機関に勤めるが、コメ1キロが買えるか買えないかほどの給料しかもらえない。

かつては、現金収入が少なくても食糧や生活必需品が配給されていたので、豊かではなくとも不自由なく暮らせた。しかし、それもはるか昔の話だ。定年退職した人は、元職場でもらっていた給料の3割を年金としてもらえるが、生活費どころか、子どもの小遣い銭にもならない。

同じ定年退職者でも、女性はかなり事情が違う。

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「女性は年齢が70歳になっても、市場や自宅の近所で商売をすることが一般的だが、男性は慣れないのでやろうとしない」(情報筋)

つまり、男性本位の社会で植え付けられた「プライド」が邪魔をするのか、女性のように商売ができないというのだ。(参考記事:妻に優しくなった北朝鮮の夫たち…亭主関白の末路は「餓死の恐怖」

定年前でも手厚い福祉を受けられることになっている栄誉軍人(傷痍軍人)も、苦しい暮らしを強いられている。軍隊での事故で片足を失った平壌在住のキムさんは、買ったうどんを転売して糊口をしのいでいる。(参考記事:平壌の傷痍軍人“キムさん”がうどんを売るワケ

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中には、半グレ集団となって、市場の利権をめぐり血で血を洗う抗争を繰り返す栄誉軍人もいる。