平壌に住むキムさんは、軍隊での事故で片足を失った。除隊後、政府が支給する配給と年金で生活する1類栄誉軍人(傷痍軍人)になった。北朝鮮の経済事情が悪化するまで、キムさん一家は配給と年金だけで、生活することができた。だが、経済事情が悪化した後、深刻な生活難に陥った。

平壌の船橋閣 ©qnrgksdlsrnjs
平壌の船橋閣 ©qnrgksdlsrnjs

最近、キムさんは毎日朝早く家を出る。船橋閣に行って栄誉軍人に国定価格230ウォンで売っているうどんを買うためだ。1類栄誉軍人である金氏は1回にうどんを2杯ずつ買うことができる。

回数に制限はなく、その気になれば何杯も買うことができる。だが、船橋閣でうどんを買って、それを売って生活する栄誉軍人が増えたため、金氏が1日中並んで買えることができるうどんはわずか4杯だ。それでも、230ウォンで買ったうどん1杯を1,000ウォンで売ることができるので、4杯買って売ったら3千ウォン以上手にすることができる。

毎月国家から金氏がもらう栄誉軍人年金は月に3000ウォンだ。1日たった100ウォンである。船橋閣でうどん1杯も買えない。4人家族の1ヶ月の生活費が10万ウォンだから、1ヶ月の生活費としては法外に少ない。うどんを売って、1ヶ月の年金を1日で儲けることができるのであれば、苦しくても仕方ない。松葉杖をついて1日中並ばなければならないのだ。

北朝鮮ではこの間、栄誉軍人に対する支援にことさら気を使ってきた。戦争が終わった後は、万景台の栄誉軍人万年筆工場、沙里院の栄誉軍人裁縫師工場などを建てて、栄誉軍人の就業を保障し、労働能力を失った栄誉軍人には配給と年金を支給してきた。また、栄誉軍人に対する支援を「公民の義務」と宣伝して、住民たちの支援を促してきた。

だが最近、北朝鮮の消息筋によれば、船橋閣に来る客の約半分は、このようにうどんを売って生活する栄誉軍人たちだという。栄誉軍人も配給と年金だけではこれ以上生活するのが不可能ということだ。

食糧難以後、北朝鮮では重要な変化が起きている。政府の配給で生きて行く人が30%程度に減り、そうした人も政府が提供する配給と月給、年金だけでは暮らすのが不可能な状況に置かれた。1ヶ月10万ウォンあれば生活できるだろうが、政府が彼らに与えることができる月給と年金はわずか数千ウォンに過ぎない。政府の格別の思いやりと支援をもらってきた栄誉軍人たちでさえ、何でも売れば生きることができる社会になったのだ。

うどん4杯を買うために1日中松葉杖をついて立っている栄誉軍人の金氏の姿は、北朝鮮の経済システムが食糧難で事実上崩壊し、残っている統制力も急激に弱まっていることの証拠でもある。

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