南北首脳会談と米朝首脳会談を控え、朝鮮半島には融和ムードが漂っているが、北朝鮮政府の国庫は相変わらずすっからかんのもようだ。中国では制裁緩和の動きが見られるが、国連安全保障理事会が採択した対北朝鮮制裁決議は有効なままだからだ。

よほど困っているのだろう。北朝鮮の金正恩党委員長は今年2月、関係各所に「海外送金作業は度を越さない程度なら協力せよ。ただし、その過程で発生した手数料は国庫に納めよ」との命令を下した。

韓国や第三国に住む脱北者が、北朝鮮に残してきた家族に送金することは違法行為で、一連の「非社会主義現象」取り締まりキャンペーンの対象としているが、その裏では送金を奨励するという真逆の行為を行っているのだ。

(参考記事:「送れど送れど減るばかり」脱北者からの送金にタカる北朝鮮秘密警察

ところが「熱心過ぎる協力」に、当の脱北者家族からは「いっそ山奥に追放された方がマシだ」(情報筋)との悲鳴が上がっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平壌の情報筋によると、地域の保衛員(秘密警察)は、脱北者家族を徹底した監視下に置いている。24時間続く監視で、身動きが取れないほどだと伝えた情報筋は、市内の楽浪(ランラン)区域に住むパクさんの例を挙げた。

パクさんの夫は、親戚に会うために中国に行き、その足で脱北してしまった。北朝鮮に残された家族は、収容所送りにされたり山奥に追放されたりするものだったが、保衛員はそうせずに、ありとあらゆる嫌がらせをしている。

人民班(町内会)や娘の通う学校に出向き、「あいつらは脱北者家族だ」と告げて、イジメや無視をするように仕向けるという。「政治的、思想的に問題がある、触らぬ神に祟りなし」との感情を煽ると同時に、「韓国に住む家族から送金を受け取って裕福な暮らしをしている」という妬みの感情を刺激しているのだろう。

保衛員は、脱北者家族を追い込んだ上で、韓国や海外に住む脱北者本人を「家族の身の安全のためにカネを送れ」と脅迫し、送金されてきたらそのほとんどを手中にするというやり方だ。脱北者は家族を人質に取られ、イジメと無視からなんとか救い出すために、必死にカネをかき集めてせっせと送るというわけだ。

このように、あえて平壌から追放せず執拗に嫌がらせをするのが、流行のやり口のようだ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も、保衛員が同じようなユスリをしていると伝えた。

清津(チョンジン)市の松坪(ソンピョン)区域の保衛員は、2ヶ月毎に脱北者家族を中朝国境沿いにいる電話ブローカーの元へ連れていき、韓国にいる家族に電話をかけさせ「カネを送れ」と言わせる周到さだ。

あまりの苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)ぶりに、脱北者家族からは「いっそ山奥に追放された方がマシだ」という声が上がり、韓国に住む家族に「自分が死ぬことになってもいいからカネは送ってくれるな」と伝える人もいるという。

しかし保衛員としても、あまりやりすぎると金づるに逃げられてしまうことになりかねない。韓国や海外に住む脱北者が多額の費用を払って、家族を脱北させる事例が後を絶たないからだ。

(参考記事:金正恩氏「裏切り」にあったか…中国の態度に異変