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北朝鮮の金正恩党委員長は今年2月、関係当局に次のような命令を下した。

「海外送金作業は度を越さない程度なら協力せよ。ただし、その過程で発生した手数料は国庫に納めよ」

ここで言う海外送金とは、脱北して韓国に住む人からの、北朝鮮に残してきた家族への仕送りを指す。最高指導者のお墨付きを得た保衛員(秘密警察)や保安員(警察官)は、以前にもまして脱北者家族にタカるようになっている。そのせいで、家族が受け取る額は目減りする一方だ。

(参考記事:脱北者の半数、北朝鮮に残してきた家族に仕送り「50〜100万ウォンが相場」

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、海外送金は「非社会主義現象」取り締まりキャンペーンの対象となっているが、逆に以前より活発になっている。

送金ブローカーの中には、保衛部や保安署に黙って送金を受け取ろうとする者がいるが、取り締まりキャンペーンの強化ですぐにバレてしまう。そのため、ほとんどのブローカーは、いやいやながらも最初から保衛部や保安署に協力する。つまり、当局は取り締まりキャンペーンを、カネ儲けのチャンスとして活用しているということだ。

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保安員は、誰にも気兼ねすることなく脱北者家族を訪ねている。表向きの理由は「失踪者の身元確認」、つまり家族の中に脱北者がいないか確認する作業だが、実際はカネの受け渡しに介入して、ちゃっかりタカろうというものだ。保安署の上層部も、上納金が得られるとあって、保安員が頻繁に外出しても咎めることはないという。

このような状況に、送金ブローカーはまんざらでもない様子だという。保衛部や保安署に守ってもらってより安全に仕事ができる上に、自分が受け取る手数料は減っていないからだ。

以前は、中国と北朝鮮のブローカーはそれぞれ送金額の10%を手数料として受け取っていたが、これが15%と20%に上がった。さらに韓国のブローカーが10%、保衛部や保安署が20%を掠め取る。

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つまり、韓国にいる脱北者が100万ウォン(約10万円)を送金したとしても、北朝鮮にいる家族が受け取れるのはわずか35万ウォン(約3万5000円)に過ぎない計算になる。

2011年の調査で手数料は送金額の2〜30%で、昨年までは30〜35%だった。それが今年初めには50%、そして今では65%というありえない額に達してしまった。

「南でも北でも家族のカネの多くが手数料として取られてしまう。分断という不幸は、こういう形でも現れる」(情報筋)