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金日成主席と金正日総書記の遺体が安置されている平壌市内の錦繍山(クムスサン)太陽宮殿の維持管理の費用を募る財団、「金日成・金正日基金」が、国内の幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)から外貨をかき集めるために、旅行業に乗り出したことはデイリーNKジャパンでも既報の通りだ。

この団体が、外国人会員を対象に破格の北朝鮮スペシャルツアーを行っている。しかし、その内容は、北朝鮮の人々に「不敬」と捉えられかねないものだ。

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平壌の高級幹部がデイリーNKに提供した画像には、湖らしきところで男性が泳いでいる様子が写っている。撮影場所は両江道(リャンガンド)にある三池淵(サムジヨン)という湖だ。

革命の聖地の三池淵で泳ぐ外国人男性(画像:平壌高級幹部提供)
革命の聖地の三池淵で泳ぐ外国人男性(画像:平壌高級幹部提供)

白頭山の山麓にあるこの湖は、金日成主席が率いる抗日パルチザン部隊が駐屯し、金正日総書記が生まれた(北朝鮮当局の主張)とされる白頭山密営のすぐそばにある革命の聖地だ。北朝鮮の人にとっては、革命史跡地踏査、つまり聖地巡礼で訪れる総本山的なところだ。

高級幹部によると、金日成・金正日基金の会員になった外国人には、一般観光客は行けないところにも行けて、できないこともできる特典が与えられるという。三池淵での水泳も、基金の会員だからこそ認められたものだ。

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北朝鮮当局は、基金により多くのカネを集めるために、多額の現金や設備を寄付した人には北朝鮮ツアーを許可し、あらゆる活動を保障している。

加入費は個人が500ユーロ(約6万5000円)、団体が1万ユーロ(約130万円)、年会費は個人が700ユーロ(約9万1000円)、団体が2万ユーロ(約260万円)。米ドル払いもできる。会員は、基金の理事会の招請で入国ビザ、出入国審査、滞在期間などで優遇を受ける。また、商業活動、投資において協力も得られる。

しかし、革命の聖地を利用してまで外貨をかき集めるやり方は、金日成氏と金正日氏の神格化に大きな悪影響を与えている。

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「三池淵は将軍様(金正日氏)の故郷で、首領様(金日成氏)の革命活動の精神が宿る聖地だと教わってきたが、そんなイメージが薄くなりつつある。革命史跡地ではなく、外国人の物見遊山の場になっていると、関係者は口を合わせている」(高級幹部)

この地域で外国人観光客を見かけることはよくあることだが、三池淵で外国人が水泳しているのを見た地域の関係者は「カネさえあれば何でもできるのか」と、外貨稼ぎに血眼になっている当局に苦言を呈している。

中央の幹部の間でも「カネの前では思想も信念もいとも簡単に崩れ去ることがよくわかる」と言われるようになっている。

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デイリーNKは2008年4月、金日成氏の遺体の保存に年間80万ドル(約8460万円)がかかると報じた。続いて金正日氏も亡くなった今、単純計算するとその倍の費用がかかるということになる。北朝鮮に蔓延する拝金主義が、経済制裁による外貨不足によりさらにひどくなっている。