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国際社会の経済制裁で外貨不足に陥っていると伝えられる北朝鮮。当局はその打開策として、最高指導者の名前が付けられた団体を、集金マシーンとして使っている。さらにはこの団体が、旅行業らしきものにも乗り出した。

この団体は、2012年に設立された「金日成・金正日基金」だ。ホームページによると、設立目的は次のとおりとなっている。

「金日成・金正日基金は偉大なる金日成同志と金正日同志を限りなく慕い、チュチェ(主体)の太陽として永遠に高く奉じようとする全朝鮮民族と世界進歩的人士の変わりない意思と念願を反映し、金日成同志誕生100周年と金正日同志70周年を迎え創立された」

この基金は、金日成主席と金正日総書記の遺体が安置されている平壌市内の錦繍山(クムスサン)太陽宮殿の維持管理、および両氏の遺訓に従い教育、保健、環境保護、人類の平和と進歩に寄与する事業を行う目的で、国内外で資金を募っている。ただ、最近になって次のような事業を始めた。

「3000ドル(約32万円)を払えば、専用飛行機に乗って白頭山、馬息嶺(マシンリョン)スキー場、平壌を巡るツアーに参加できる」(情報筋)

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ツアーに組み込まれている馬息嶺スキー場は、金正恩党委員長が最大の業績のひとつとして誇っているものだ。地域一帯の観光開発を目的に巨額の予算をつぎ込んで作られ、国営メディアは着工から完成までの速さを「馬息嶺速度」だと宣伝したが、その影では建設中の事故により多くの犠牲者が発生したと伝えられている。

(参考記事:【再現ルポ】北朝鮮の橋崩落事故、500人死亡の阿鼻叫喚…人民を死に追いやる「鶴の一声」

平昌冬季五輪に合わせて行われた南北合同訓練の様子が朝鮮中央テレビで放送されたことから、国内では「一度は行ってみたい」と思う人が増えているという。

しかし、これは単に「憧れの地」を訪れる以上の意味がある。金日成氏と金正日氏の名前が入った団体が主催するツアーに参加することは、体制への忠誠心を示すことに繋がるからだ。

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米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は2015年、平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋の話として、基金が錦繍山太陽宮殿の維持のために募金を募っており、100万北朝鮮ウォン(約1万4000円)以上を寄付した者には、フレームに入った証明書を送ると宣伝していると伝えた。

「ほとんどの人は寄付に消極的で、誠意を示すために数百北朝鮮ウォンを出して取り繕うことが多いが、大学進学や朝鮮労働党への入党を目指す子を持つ親は、100万北朝鮮ウォン以上を出して、証明書を将軍様の肖像画の下にかけておく」(情報筋)

寄付金を出せば忠誠心を認められるが、出さなければ忠誠心が足りない問題人物にされかねないということだ。つまり、事実上の強制だ。前述のツアーも半強制である可能性がある。

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また、このようなシステムは、体面を気にする北朝鮮の人の心理を利用しており、「他の人も出したのに自分が出さない訳にはいかない、どうせ出すなら他の人より多めに出そう」と思わせるものだ。

さらに、安全をカネで買う側面もある。基本的人権が尊重されていない北朝鮮では、どんな金持ちであってもあっという間に命と財産を奪われてしまうことがある。そのリスクを少しでも減らすために、せっせとカネを上納するというわけだ。