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北朝鮮は、国際社会の制裁が強化される中でも、マンション建設に異様なほどの執着ぶりを見せている。金策(キムチェク)工業大学教育者住宅、未来科学者通り、黎明(リョミョン)通りなど次から次へとタワーマンション団地を建て続けているのだ。

北朝鮮に対しては、制裁により著しい外貨不足に陥っているのではないかという指摘がなされているが、それでも建設が進められるのにはワケある。 平壌のデイリーNK内部情報筋がそのからくりについて、平壌郊外の寺洞(サドン)区域のマンションを例に挙げて説明した。

計画はまず、当局がマンション建設計画をぶち上げるところから始まる。計画は、貿易会社などの不動産業者に丸投げされる。資材購入の予算は業者が自力で調達することが求められるため、トンジュ(金主、新興富裕層)の投資を募り、集めた手付金を投入する。

手付金の額は、立地条件、住居、商業施設などの用途、フロアなどの条件によって決まる。

「今回マンションが建てられる寺洞区域は郊外にあるが、市内中心部までの交通の便がいいので、手付金が集まっている」(情報筋)

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あまり条件が良くなければ手付金が集まらず、計画が進まなくなってしまう。そのため、立地条件は非常に重要だ。そのため、建設の許認可権を握る担当者やそのバックについている大物との関係は欠かせない。彼らと関係を作るための業者間の競争は熾烈だ。

手付金の額は、1階が1万ドル(約110万円)、5〜7階が3万ドル(約330万円)、11階が8000ドル(約88万円)だ。電力難で停電が頻繁に起こる北朝鮮では、上のフロアの人気が低い。しかし、下のフロアは空き巣に入られるリスクが高まる。一番人気がある5〜7階の手付金が一番高いというわけだ。

ちなみに、咸鏡北道(ハムギョンブクト)茂山(ムサン)の住宅価格についての論文を書いた慶尚大学のチョン・ウニ教授によると、北朝鮮の住宅価格は、家そのものの質に加えて、市場、公共施設へのアクセスや物資運搬が容易か、上下水道が完備しているか、断水の際に使える井戸水は出るかなどの条件により左右される。

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また、地域を管轄する人民班長(町内会長)、保安員(警察官)、保衛員(秘密警察)の性格や、彼らとの関係性も、家選びの重要な目安となる。いくら忠誠心の塊のような人でも、彼らとの関係が悪ければまともに生きていくことができないのが北朝鮮社会だからだ。

マンションの建設が進み鉄骨工事が終わったら、投資者から手付金の2倍の額を受け取る。つまり、このマンションの5〜7階の部屋の価格は9万ドルというわけだ。完成後のインテリア、電気配線などは投資者が行う。

なお、最上階の12階の部屋は売りに出されていない。完成後に収益の10%を国に納めるのが条件だが、現金でやり取りすることが法に触れるため物納の形を取っている。「12階はあまり人気のないフロアなので、建設業者は国にくれてやっても損はしないと計算したのだろう」(情報筋)ということのようだ。

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韓国の国家安保戦略研究院のイ・ジュンヒョク研究員の推算によると、トンジュの数は50万人。全人口の2%にあたる。彼らは莫大な額の財産を持っているが、国内で投資しようにもめぼしいものはなく、海外に投資するのは難しい。そこで彼らが目をつけたのは国内の不動産だったというわけだ。当局は、手持ちのカネがなくてもトンジュからの投資でマンション建設を行えば、成果として示せる。

マンションの建設費はいくらくらいになるのだろうか。

2015年10月21日の労働新聞は、未来科学者通りのタワーマンション団地の総工費は99億5940万北朝鮮ウォン(約1億4900万円)と報じた。しかし、ある脱北者は「無駄遣い」との批判を避けるために「逆水増し」されている可能性を指摘し、実際はこの10倍以上かかっているものと見ている。

(参考記事:北朝鮮「未来科学者通り」総工費を異例の公表…少ない額に「逆水増し」の指摘も

15億円だとしても極めて安い金額だが、それは人件費がほとんどかからないからだ。

建設工事にあたるのは、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士か、突撃隊と呼ばれる建設支援部隊だ。給料はほとんどもらえず、与えられる食事も極めて貧弱だ。

(参考記事:北朝鮮「突撃隊」の実態は現代版奴隷…韓国人権団体が指摘

そのため、民家に押し入って盗みを働いたり、資材を横流ししたりして近隣住民とトラブルを起こす事例が後を絶たないようだ。

(参考記事:盗む!暴れる!鉄道工事「6.18突撃隊」がまるでチンピラ