人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮の首都・平壌はかつて「東洋のエルサレム」と呼ばれていた。1907年1月に「平安南道<ピョンアンナムド>冬季男性査経会」という、聖書を学ぶ集まりが2週間に渡って開かれたのだが、徐々に興奮が高まり、通声祈祷(トランス状態に陥って祈りの言葉を叫びつつけること)や懺悔も相次いだ。それも横領、殺人、強姦など、墓場まで持っていくべき自分の犯罪行為を、何百人もの民衆の前で告白し、許しを請うた。

このことは全国に広がり、プロテスタント信者が急速に増えた。この出来事は「平壌大復興」と呼ばれ、朝鮮半島にキリスト教が広がり、定着する大きなきっかけとなった。背景には、日本に併呑されつつあった当時の朝鮮の不安感があったものと見られる。

ところが、日本からの植民地支配から解放された後の1945年、北朝鮮のトップの座についた金日成は、自らがクリスチャンの家の出であるにもかかわらず、キリスト教の弾圧を開始し、処刑や投獄が相次いだ。これは、クリスチャンには貧農よりも富農が多かったことと関係していると言われている。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

多くのクリスチャンは、信仰の自由が認められている韓国へと逃れた。朝鮮戦争を経て、韓国はクリスチャンにとって信仰の砦であると考えられるようになり、ナショナリズムと結びついた韓国型のキリスト教が誕生した。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮からキリスト教は完全に消滅したように見えるが、数はわからないものの、「地下教会」が存在する。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は昨年5月、現地の情報筋からの情報として、平安南道(ピョンアンナムド)順川(スンチョン)市の東巌里(トンアムリ)で、午前5時ごろに集まって聖書を読んでいた5人のクリスチャンが保衛部(秘密警察)に踏み込まれて現行犯逮捕されたと報じた。家宅捜索の結果、数十冊の聖書に関する冊子が押収された。

この村には、日本の植民地時代に大小の教会8か所と、長老派系の義英學校が存在するなど信仰心の篤い地域として知られていた。1997年、2005年にも同様の弾圧が起きている。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

ところで、件の5人はどうなったのだろうか。

RFAは後追い報道をしていないが、韓国政府が発表した「2023北朝鮮人権報告書」で紹介された事例を見ると、概ね見当がつく。

事例1
2019年に平壌市で秘密裏に教会を運営していた団体が摘発され、5人が公開処刑され、7人は管理所(政治犯収容所)に送られ、30人は労働教化刑(長期の懲役刑)を受け、家族を含む関係者50人が強制追放された。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

まさに地下教会に関する事例だ。他の地方でも重大事案として取り上げられるキリスト教だが、首都の平壌で起きた事件ということで、非常に厳しい処分が下されたようだ。

(参考記事:北朝鮮・両江道で2年ぶりに「国家密輸」再開

事例2
2018年に平安南道平城(ピョンソン)市で18人に対する公開裁判が行われ、うち1人は聖書を所持してキリスト教を伝えた容疑で死刑を宣告された。裁判後、すぐに公開銃殺された。

平城は、平壌の北東に隣接する流通の中心地で、北朝鮮各地から人や物が集まる。ここで宣教が行われていたとすると、他の地方に広がっていてもおかしくはない。