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一昨年1月のコロナ鎖国以降、一切の貿易が遮断されていた北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)で、2年ぶりに貿易が行われた。北朝鮮の貿易は、国の承認と通関検査を受けた公式貿易、国の承認は得たものの通関を経ずに持ち込まれる非公式貿易、国の承認も通関も受けていない密輸の3重構造からなっているが、今回行われたのは国家密輸、つまり非公式貿易だ。

現地のデイリーNK内部情報筋は、先月中旬、三池淵(サムジヨン)市の双頭峰(サンドゥボン)税関を通じて、国家保衛省(秘密警察)主導で秘密裏に国家密輸が行われたと伝えた。

北朝鮮に持ち込まれたのは、2月16日の光明星節(金正日総書記の生誕記念日)80周年を迎え、三池淵市民に特別配給を行うための物資だ。小麦粉、食用油、生活必需品を積んだ中国・東方自動車製のトラック30台が北朝鮮に入国したとのことだ。

ドライバーは民間人で、人員と物品の監視のために国家保衛省の要員が1台に1人ずつ乗っていた。また移動ルートには、20メートル間隔で両江道保衛局と三池淵市保衛部の要員が立ち、警備に当たる厳戒態勢だったという。

(参考記事:北朝鮮、金正恩政権10周年を祝い異例の特別配給

北朝鮮の新義州と中国の丹東を結ぶ貨物列車の運行が再開されたのは先月16日だが、今回の国家密輸はそれとほぼ同時期に行われていた。

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ちなみに今回の国家密輸が行われた双頭峰税関は、新義州(シニジュ)、元汀里(ウォンジョンリ)などとは異なり、通常は通関業務を行っておらず、特別な時に限って開かれる。今回ここが選ばれたのは、輸入品の目的地から最も近いからと思われるが、国際社会の目が届きにくいことから、今後、制裁対象品目の密輸にも使われる可能性が考えられる。

両江道で貿易が行われるのは、一昨年1月以来のことだ。情報筋は、昨年にも国家密輸が数回試みられたが、首脳部(金正恩総書記)の承認を得られず実現していなかったが、貨物列車の運行再開に合わせて、承認が下されたようだと伝えた。

鄭京擇(チョン・ギョンテク)国家保衛相ら高位幹部は、昨年7月末と10月中旬の2回にわたって、双頭峰税関と隣接する大紅湍(テホンダン)郡の三長(サムジャン)税関など、両江道内の複数の施設を視察した。新義州郊外の義州(ウィジュ)飛行場には大規模な防疫施設の国家西部物流総合処理場が完成しているが、処理能力に限界があり、両江道を通じた貿易再開の可能性を見極めるための視察だったと伝えられている。

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(参考記事:北朝鮮の貿易都市近隣に大規模検疫施設、コロナ後に向けた動きか

当局は自力更生を強調し、思想で生活苦を乗り切ることを国民に強いてきただけあり、今回の密輸の話が知れ渡ると国民から反発が出るだろうと、情報筋は伝えた。

(参考記事:「欲しがりません勝つまでは」北朝鮮で耐乏生活の思想教育