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昨年のアフリカ豚熱(旧称アフリカ豚コレラ)に続き、今年は新型コロナウイルスと、2年続けて感染症に苦しめられている北朝鮮。それに対応するだけの施設も設備もないため、当局は感染拡大防止策として移動制限を強化している。

(参考記事:新型コロナに苦しむ北朝鮮でアフリカ豚熱再発

同国ではそもそも、自分の住んでいる市や郡から他の地域に移動するには、旅行証と呼ばれる国内用パスポートが必要だが、デイリーNK内部情報筋によると、現在は首都・平壌への移動を除いては概ね可能となっている。出張であることを示す証明書が必要だが、そんなものはワイロさえ払えばどうにでもなる。

移動手段として最も好まれているのは鉄道だ。かつてほどではないにせよ、依然として停電による立ち往生が起きているが、料金の安さが魅力だ。

(参考記事:北朝鮮で鉄道運行が正常化…「東京ー岡山」の距離を24時間

北朝鮮の北部内陸線某駅の料金表(画像:デイリーNK内部情報筋)
北朝鮮の北部内陸線某駅の料金表(画像:デイリーNK内部情報筋)

これは、両江道(リャンガンド)金正淑(キムジョンスク)郡にある北部内陸線の某駅の料金表だ。恵山(ヘサン)から慈江道(チャガンド)の満浦(マンポ)を経て平壌までを約23時間で結ぶ第4列車の運賃は6700北朝鮮ウォン(約80円)となっているが、実際に乗客が払うのは3万北朝鮮ウォン(約360円)だ。ダフ屋から買うからだ。

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それぞれの停車駅には、決められた量の切符の割り当てがあるのだが、駅員たちは切符をダフ屋に横流しする。寝台車や1等車以外はすべて自由席であるため、多少横流ししたところで足がつかないのだ。

このようなダフ屋が登場したのは、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころからだ。ちなみに米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋によると、2013年当時のこの区間の切符は、国定価格とダフ屋の価格との格差が20倍に達していたが、今では6倍程度に収まっている。ダフ屋の切符が安くなったわけではなく、国定価格が4倍程度値上げされたからだ。

一方で、経済的に余裕のある人はタクシー、バス、トラックなどのソビ車(民間人所有の車両)を利用する。平壌までの運賃は40万ウォン(約4800円)で、24時間ほどかかるが、鉄道のように大幅な遅延がないため、こちらの方が速い。

(参考記事:数百キロの距離も「鉄道よりタクシーで」…北朝鮮の長距離交通事情

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だからといって、両江道の道路事情は決して良好とは言い難い。高速道路は通っておらず、一般の国道は山道が多くて非舗装の箇所も少なくない。2018年3月には、道路の凍結により交通事故が相次ぎ、1日で500人が死亡する事態となった。

(参考記事:また死亡事故発生、北朝鮮「血塗られた大型事故」の歴史