作業班長と仲良くしていれば無料で貸してもらるが、ガソリンは自分で調達せねばならない。貧しい人々は、家族総出で人力で農作業をするしかなくなったのだ。
問題はそれにとどまらない。収穫分から軍糧米として一定量を供出させられるのだ。国は一銭の予算もかけずに収穫を得られるが、農民にとっては不満のたまるやり方だ。
文徳郡の農場では、圃田担当制に基づいた農地の引き受けを拒否する人もいる。そういう人たちは、協同農場ではなく50〜100坪の個人耕作地で農作業を行う。圃田担当制で協同農場の土地を耕す一種の「小作農」より、自分の土地で農業を行う「自作農」の方がよっぽど儲かるという判断からだ。
農地の引き受けを理由なく拒否すると、当局から「思想に問題がある」として目をつけられかねないので、「病気で働けなくなった」との言い訳をして、自分の農地をせっせと耕すのだ。