手押し車、大八車、リアカー。これらの荷車を北朝鮮では「クルマ」と呼ぶ。過去の遺物とまではいかなくても、時代遅れ扱いだったが、最近になってこのような人力で荷車を引くビジネスが再び脚光を浴びている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、清津(チョンジン)駅、浦港(ポハン)市場、水南(スナム)市場の周辺には最近、数多くの荷車引きがいて、客待ちをしている。数が増えたため、客待ちの場所を巡って、けんかになることもある。また、60年代以前によく見られた大きな牛車も増えた。

荷車が人気の職種として脚光を浴びている背景には市場の発展がある。

市場が拡大するにつれ、運ぶ荷物は増える一方だ。しかし、気軽に自動車は使えない。所有している人も限られており、ガソリンも不足気味で、ガソリン価格も決して安くない。

アジアプレスの資料によると、今年2月末、咸鏡北道の市場でのガソリン価格は、1リットル6000北朝鮮ウォン(約78円)。物価水準と比べて非常に高い。こうしたなか、荷車が脚光を浴びているというわけだ。

かつては種銭を持たない人がやっていたこの荷車引きだが、今ではそう簡単に始められるわけではない。荷車を購入した上で、地域の運送事業所で登録を行う必要がある。手数料を支払って、ナンバーと運送証を受け取るとようやく営業できようになるが、事業所には毎月30万北朝鮮ウォン(約3900円)の上納金を納めなければならない。

それでも、「荷車は儲かる」という話を聞きつけた人が、次から次へと荷車ビジネスに参入している。この影響で、当局は荷車専用の運送事業所を別途開設したほどだ。運送事業所はワイロ欲しさに運送証を乱発し、さらには偽物の運送証まで出回る有様で、このままでは供給過剰に陥る可能性も出ている。

ちなみに種銭を持たない大学生は、レンタ荷車を使用してバイトをしている。荷車を持っている人から、運送証とナンバーごと借りて、夜に荷物運びの仕事を行う。所有者には儲けの一部をレンタル料として払う。こうすることで、荷車の稼働率が上がるというわけだ。

荷車の増加は、保安員(警察官)にとっても「いい話」だ。交通違反だといちゃもんをつけて、罰金をむしり取るチャンスが増えるからだ。

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