対岸の中国から国境の川を渡ってくるが、農業用トラクターのタイヤチューブを使った船が主な運搬手段だ。チューブをふくらませ、木の板を固定すれば船になる。北朝鮮側に着くとトラックに載せ替えて、キム氏の下に荷物が届く。運送には現地の国境警備隊長の車を利用して行っていたというから驚きだ。もちろん、キム氏が直接出向くことはしない。警備隊の兵士にカネをつかませ「使い走り」させていた。
代金の決済は、少しばかり複雑だ。「トンテコ(金梃子)」と呼ばれる金融業者が仲介に入る。この業者は中国側と北朝鮮側に「支店」を構えており、北朝鮮側の業者に金額を払えば、中国側にお金がわたる算段だ。「トンテコ」は融資もしてくれる。利子はいわゆる「トイチ」、一日1%の超高金利だ。中国側への支払いが間に合わないときに頼むことがあるという。
ただ、「商売はラクではなかったと」キム氏はため息交じりに明かす。