「金正恩は農民の生活なんて見えていませんよ。自分の権力を維持するのに精一杯なんでしょう。農業改革も看板だけ変えただけで、私の農場では金正日時代とまったく変わりません。むしろ、生産を増やせという金正恩の要求にこたえるために、ウソの報告がエスカレートして、にっちもさっちもいかなくなっています。状況は本当にもう、限界だと考えてよいでしょう」。
A氏は幹部としての職務上、ほかの地域の農場を見学することも多かった。「あなたの農場は良い方ですか、悪い方ですか」という質問に、しばし間をおいてこう答えた。
「残念ながら、良い方でしたね」
では「悪い方」に入る農場はどんなあり様なのか――それについては、今後の取材の課題としたい。(了)