北朝鮮の核兵器開発が止まらない現状を受けて、韓国国内で「核武装論」が持ち上がっている。韓国のあるシンクタンク関係者が話す。

「わが国で核武装論が力をもってしまうのは、もはや仕方のないことです。北朝鮮が核兵器開発にまい進する理由は、わが国から報復を受ける心配をせずに、ゲリラ戦や破壊工作を仕掛けることができるからです。『核ドミノ』が憂慮されようとも、わが国を防衛するには『相互確証破壊』による勢力均衡を作り上げるしかありません」

このような動向には日米が懸念を示す一方、中露はさしたる緊張感を持っていないようだ。むしろ米軍の最新鋭高高度迎撃システム(THAAD 〈サード〉)の配備にのみ、敏感に反応しているように見える。

「中国は核を好む」

北朝鮮が核武装し、さらに弾道ミサイルの性能まで向上させたら、米韓がTHAADの配備で立ち向かうのは当然だ。これまで北朝鮮を友好国として甘やかしてきた中露が今さら怒って見せるのは、どこか滑稽な観すらある。

米紙ニューヨークタイムズは11日付に、「中国が北朝鮮を処罰するとみる専門家はあまりいない」と題した記事を掲載。「中国の専門家たちは、中国に北朝鮮との同盟関係を変える気はなく、核プログラムを縮小するよう圧迫することもないとみている」と報道した。

中国は北朝鮮が輸入する原油と食糧のほぼ100パーセントを供給しており、北朝鮮制裁で最も大きな威力を発揮できる国だ。しかし中国は、それをしてこなかった。

上記の記事に登場する専門家たちは、「中国は米国よりは北朝鮮に近い」として「中国は(強力な制裁がなされて)北朝鮮が崩壊することよりも(北朝鮮が)核兵器で武装するほうを好む」と分析している。

「核武装の方がマシ」

ロシアも同様である。

ロシア国営通信・スプートニクの韓国語版は7月14日、ロシア科学アカデミー極東研究所朝鮮調査センターのアレクサンドル・ジェビン所長のインタビューを配信した。

同所長は、米国がTHAADの在韓米軍への配備を決めたのは、ロシアと中国の核抑止力を弱めるのが目的だと指摘。ロシアの安全保障のためには、米国のMDを認めるより北朝鮮の核武装に暗黙の了解を与える方がマシであるとまで主張している。国営通信や科学アカデミーの幹部が、プーチン政権の意向と関係なくこのような発言をしていると考えるのはナンセンスと言えるだろう。

北朝鮮が何かことを起こすたびに、「今度こそは、北朝鮮の後ろ盾である中国もロシアも黙っていないのではないか」との論調が出てくる。

しかし、北朝鮮が主敵と考えるのは米国と韓国であり、中国やロシアではない。中露は米国に対抗するために北朝鮮を利用できると思えば、迷わずその選択をする。だから米韓や日本は、北朝鮮の核の脅威を除去するために中露が協力してくれるなどとは期待しない方がいい。

北朝鮮の核の脅威をなくすためには、正恩氏の独裁を終わらせ、あの国にまったく別の、我々と理性と常識を共有できる体制を出現させねばならない。そのためにどんなに時間とコストがかかろうとも、本質的な解決方法は、もはや北朝鮮の「レジーム・チェンジ(体制変更)」しかないのである。

北朝鮮の予測不可能性は世界の安全保障、そして経済にだって悪影響を及ぼしうる。それ以前に、国民を虫けらのように扱う残忍さを鑑みれば、もはやレジーム・チェンジを強いる上での人道的な大義は整ったと言って過言ではない。

日米韓は国際社会の対北包囲を先導すると同時に、北朝鮮の前近代的な世襲体制を倒し、新たな国造りを担うことのできる民主勢力が北の国内に生まれるよう、力を傾けるべきなのだ。

問題はレジーム・チェンジをいつ、どのようにやるかだが、方法論については十分な検討が必要と言える。明らかなのは、行動するなら早ければ早いほど良いということだ。核兵器を持ったばかりの正恩氏と、数十個、あるいは数百個も揃えた正恩氏とでは、前者と対決する方がはるかにリスクが小さいからだ。

(文/ジャーナリスト 李策)

    関連記事