北朝鮮の朝鮮中央通信は11日、「核弾頭爆発実験の成功の報に接した各階層の反響」と題した記事を配信。5回目の核実験に対する国民のコメントを紹介した。

それによると、たとえば人民経済大学の教師チョン・ウォンソブ氏は、次のように語った。 「核弾頭が標準化、規格化されることによって、われわれがいろいろな分裂物質に対する生産とその利用技術を確保し、各種の核弾頭を決心した通りに必要なだけ生産できるようになったのだから、これは敵に与える無慈悲な核の大目玉である。 本当に、核強国の前列に堂々と立った共和国公民の誇りを胸いっぱいに感じる」

公開処刑も

一方、チョンリマ製鋼連合企業所の労働者、パク・ウォンスル氏のコメントは次のとおりだ。 「今回の核弾頭爆発実験は、米国の対朝鮮圧殺策動に核抑止力の強化で応える朝鮮民族のたくましい気概をよく示した」

言うまでもなく、これは北朝鮮の公式報道であり、登場した人々は当局から求められた「模範解答」を述べているだけである。北朝鮮は、外国製のドラマや映画をこっそり見ただけで酷い罰を受ける国だ。こんなところで「核!?とんでもないことですよ!」とか、「関係ねぇよ!」などと言おうものなら、政治犯収容所に送られるか公開処刑にされてしまう。

それでも、彼らは頭の中の隅々まで恐怖に支配されているわけではない。自由にものを言える場面では自分の意見をハッキリ言うし、表現もけっこうユーモアやウィットに富んでいる。

では、核実験に対する北朝鮮国民のホンネはどのようなものか。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)に住むデイリーNKの内部情報筋は「庶民の間では、『核のおかげで生活が良くなった部分があるのか、むしろ経済封鎖(制裁)のせいで生きるのがたいへんになっている』という不満がほとんど」であると語った。

しかし若者たちは…

また両江道(リャンガンド)の情報筋も、「当局は5回目の核実験が成功したと大騒ぎしているが、庶民は食べていくのがさらに難しくなるのではないかと心配している」と話す。

日本に暮らす私たちとまったく同じなのだ。

とはいえ、懸念要素がないわけでもない。慈江道(チャガンド)情報筋が言う。 「北朝鮮の庶民は金正恩の悪口を言うのが常だが、核やミサイル実験のニュースには肯定的である場合もある。特に若者たちは核実験の報道が出るたび、『核保有国の公民(国民)』としての誇りを感じているようだ」

しかしこういう若者とて、広い世界に飛び出せる自由と核武装のどちらかを選択する機会があるなら、自由を選ぶ人が多いはずだ。そうした機会がない中で、ナショナリズムに傾倒しているものと思われる。

こうした反応は今は一部だろうが、このまま時間が経過するとどのような意識が北朝鮮社会に芽生えるかわからない。北朝鮮により多くの外部情報を送り込み、自由を求める人々と連帯する取り組みが必要だ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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