だから今後も外交官の亡命が続くようなことになれば、残された外交官に対する上納金のノルマは重くならざるを得ない。そうなればさらに、亡命の連鎖は拡大することだろう。
そして、そんな厄介な職業に就きたいと考える若者も減るはずだ。以前、たとえ上納金のノルマがあろうとも、北朝鮮の人々にとって海外駐在員は「花形」だった。
しかし最近は粛清を恐れ、国内で商売をしようとする向きが増えていると聞く。
本来、北朝鮮のような硬直した社会こそ、世の中の仕組みを回すために個々の人材の能力に依存する部分が大きいものだ。それを知らない正恩氏の恐怖政治は、人々を確実に委縮させている。
体制を引き締めるための恐怖政治が、かえって体制を空洞化させるという、崩壊に向けた逆説が、すでに回り始めているのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面今回の太公使の亡命は、正恩氏が、近い将来において直面することになる危機をそのまま投影している。