北朝鮮当局が推し進める大増産運動「200日戦闘」の目玉の1つが、平壌市内の大規模高層マンション団地「黎明通り」。

この場所が、祖父と父が眠る錦繍山太陽宮殿のお膝元だけあって、金正恩党委員長の熱の入れようは尋常ではない。

今年の朝鮮労働党創建記念日(10月10日)の完成を目標に、無理なピッチで建設が進められているが、その先行きに暗雲が立ち込めつつある。その原因は「労働力不足」だ。今月初め、建設現場を訪れたという30代の北朝鮮男性は次のように語った。

「現在、建物の骨組みを組み立てる工事が行われているが、人手が激しく足りない。脱走者や負傷者が多数発生しているためだ」

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、黎明通りの建設工事は各地方の様々な機関に割り当てる形で行われる。担当の機関は、労働者の確保のみならず、食事、宿舎、さらには資材の確保まで、すべてを丸投げされる。

咸鏡北道の人民委員会(道庁)に割り当てられた区域では、工事がストップ。17時間に及ぶ長時間労働を強いるのに、食事をまともに配給せず、宿舎の環境が劣悪だったため、一人、また一人と脱走し、ついにはほとんどいなくなってしまったからだ。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の突撃隊が担当している地域でも、深刻な人手不足だ。「ついでに平壌見物でもしようかと軽い気持ちで参加した、若者たちが、あまりにも現場が3K(きつい、汚い、危険)だから、音を上げて、次々に逃げ帰ってしまったからだ。

突撃隊参加の青年組織は、地元でなんとか労働者を集めようと四苦八苦している。「参加すれば労働党への入党を認める」と破格の条件を提示しているが、やれ家庭の事情がある、やれ健康に問題があるなどと言い訳を並び立てて、参加しようとしない。それほど悪評が広まっていると言えよう。

結局は、半強制的な動員に頼らざるをえないという。

南浦市は、多くの若者を動員し、黎明通りの建設現場に送り込んでいるが、全員が徴兵検査の不合格者だ。90年代末の大飢饉「苦難の行軍」の前後に生まれた若者の多くは、子どもの頃にまともに食事にありつけなかったため、体格が小さく、体力もない。そのため、非常にきつい現場に耐えられないのではないかと言われている。

黎明通りは、70階建てのタワーマンションを含め40数棟、2800戸の高層マンションと、60数棟の公共建築からなる。金正恩党委員長が建設の指示を下したのは3月中旬で、完成予定は10月10日なので、実質的な工期は半年に満たない。

北朝鮮の労働新聞は、わずか100日あまりで3棟の高層マンションの骨組み組み立てが完成したと書き立て、「速度戦」を煽っているが、手抜き工事のオンパレードとなることは火を見るよりも明らかだ。

ちなみに、現在日本で最も高いタワーマンションである大阪の「ザ・キタハマ」(59階、209.4メートル)は、建設に3年半かかっている。

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