だから、正恩氏は核武装をあきらめないし、彼が「対話」に乗り出すとしたら、軍事的圧力で何かを脅し取ろうとするときだろう。
ならば、我々はどうするべきか。想起して欲しいのは、抑圧されている北朝鮮の国民の利益と、地域の安定を望む周辺各国の人々の利益は、大きなところで一致しているということだ。民主主義が存在しないことが、金正恩体制が暴走する根本的原因なのである。
もちろん、北朝鮮の民主化には膨大なコストと時間がかかるだろうが、核武装が進むのを黙ってみているよりはマシだ。「急がば回れ」の一言に尽きる。
今後、国際社会が北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するために圧力をかけるというのなら、その延長線上には北朝鮮の民主化をハッキリと見据えるべきだ。そうしなければ、どんな努力も無駄になってしまう。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。