北朝鮮の平壌科学技術大学のキャンパス内ではGoogleやYoutubeなどへのアクセスが可能であるという。同大学の名誉総長が、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)とのインタビューで明らかにしたものだ。

インタビューに答えたのは、米国国籍のパク・チャンモ名誉総長。平壌科学技術大学は、北朝鮮の教育省と韓国の社団法人「東北アジア教育文化協力財団」の共同投資で設立された北朝鮮初の私立大学だ。

平壌郊外に位置する楽浪(ランラン)区域の勝利洞(スンリドン)にあり、敷地は100万平米。米国やカナダのキリスト教財団の支援を受けていることもあって、敷地内には教会がある。

パク名誉総長によると、平壌科学技術大学は、北朝鮮で唯一、大学院生や教授がインターネットにアクセスする許可を得た大学だ。無線ではなく有線でアクセスする。米国の各大学の電子図書館はもちろん、Google、Youtube、ウィキペディアにもアクセス可能だ。

趣味や娯楽はダメ

ただし、ネット利用は研究目的に限られている。

趣味や娯楽のためにネットを見ることは許されていない。その理由について、「IPアドレスが一つしかなく、外国人の教授と北朝鮮人の教員、大学院生が使おうとするため余裕がないからだ」とパク名誉学長は説明した。

また、遮断されているウェブサイトも存在するが、学生たちはそもそもそのようなサイトにはアクセスしようとせず、アクセスしたサイトが問題になったこともないと述べた。

同大学の他に、金日成総合大学と金策工業大学が、大学院生にインターネットを使える設備を準備しているが、今のところ、いつ実現するかはわからないという。

メアドを「共有」

同大学では、2010年の開校当初からインターネットにアクセスできたが、その対象は大学院生に限られていた。しかし、学部生の卒業論文作成が難しい事情を理解してほしいと、大学側が当局に陳情。その結果、論文作成2ヶ月前からは学部生の使用が許可されることとなった。

Eメールも使用可能だが、大学名義のGメールの一つのアカウントを、学生や教授が共同で使う形になっていることから、「必要なものでなければ、使いにくい」と述べている。

一つのアカウントを共有するのは、同大学のみならず、北朝鮮の全ての機関でも同じだ。北朝鮮の人が出す名刺を見ると、同じ機関に所属する全員が同一のメールアドレスを記載している。

一方、海外留学に行く学生は、大学から個人用メールアドレスを与えられる。

また、人口2500万人の北朝鮮で、インターネットが使える人はどれぐらいいるかという質問にパク名誉総長は「わが校の学生100人と教授20~30人、指導者層はもっと多く使っているだろう」と答えた。

ケンブリッジにも

パク名誉総長は、多くの卒業生が海外に留学に行っていることも明らかにした。

この大学からは、20人がスイスのウプサラ大学、英国のウェストミンスター大学の大学院に留学した。また、金融専攻の学生はケンブリッジ大学に留学した。

現在は10人が海外でいて、ウプサラ大学に5人、中国の農学科学研究院、ブラジルのサンパウロ大学で学んでいる。

同学の修士課程を終えた学生は、一般の研究所や大学の教員となる。また、博士課程に進む学生もいる。ブラジルのサンパウロ大学に留学し、MBAに進んだ2人の学生は、2年後にブラジル企業で雇用してもらうという条件で奨学金を出して送り出した。

また、学部を卒業した1人が、北朝鮮の携帯電話関連会社に就職し、現在マレーシアで勤務している。

まるで「出島」

パク名誉総長のこのような発言を、疑いの目で見る向きもある。

彼は韓国内外のメディアに度々出演し「北朝鮮の技術が進んでいる」という内容の発言を行っており、北朝鮮の広告塔になっていると一部で批判されている。また、同大学をキリスト教財団が支援していることに対しても、キリスト教界の一部から批判が出ている。

また、平壌科学技術大学の元英語教師で、韓国系米国人のスキー・キム氏が韓国メディアに語ったところによると、同大学の学生はコンピュータ専攻であっても、インターネットが何かを知らないのが実情だという。

キム氏によると、彼らは、在学中に外出を許されず、親元に帰ることすらできない。大学は厳重に警備、隔離され、外国人教員も北朝鮮当局の案内員がいなければ外出は許されないなど、厳しい統制のもとに置かれている。まさに、江戸時代の長崎の「出島」のような環境であるわけだ。

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