北朝鮮で今月9日に閉幕した朝鮮労働党第7回大会に対して、早くも住民の不満や怒りの声が漏れ伝わってくる。その理由は、ズバリ、党大会の内容が「期待外れ」だったからだ。

「NO!労働党」

不満を持ちつつも、一部の人々は大会前、そして始まってから「部分的でも改革・開放路線が発表されるのではないか」と、淡い期待を持っていた。しかし、金正恩氏は「改革・開放の風を吹き飛ばして社会主義の道を前進してきた」と、全否定。また、テレビ中継も少なかった。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、大会初日の5月6日、当局の指示に従って工場、企業所に集まり、じっと座ったままテレビを見ることを強いられた。

「前日から予告があっただけに、てっきり党大会の中継が行われる思っていた。しかし、いくら待っても大会の映像は流れず。退屈な記録映画ばかりを見させられた、集まった人々からは、徐々に不満の声が上がりだした」(情報筋)

ある年配者は、情報筋に対して1980年の第6回大会と比べると「今大会は盛り上がり」に欠けると述べたという。彼は、「6回大会の内容は、朝鮮中央テレビや第3放送(有線ラジオ)で伝えられ、大会に参加できない人にも、内容を詳しく伝えた。視聴者をあたかも党大会に参加しているような気分にさせ、忠誠心や結束力を高めたことは間違いない」と情報筋に語った。

今大会の開会の辞は、9日午後10時(日本時間午後10時30分)になってやっと放送されたが、内容の公開は不十分。これでは不満を持つ人が出てきても仕方がない。

情報筋によると「何が怖くて中継できないんだ」と怒りをあらわにしたり、「『ロドンダン(労働党)』ではなく『ノータンダン』(NO!堂々)だ」と英語混じりのジョークを飛ばして党大会への不満を表した。

また、若い金正恩党委員長が、画期的な路線を示すかも?という期待もあったが、核保有国や対米姿勢を強調するだけで、「またか!他に言うことはないのか」という声も出る始末。こうした不満に警戒しているのが治安当局だ。

大会初日は放火テロも発生

昨日の本欄で、大会閉幕翌日に、プロパガンダポスターやスローガンが、即座に撤去されたという最新情報を紹介した。一部の人々が、党大会への不満をスローガンやポスターなどの宣伝物にぶつけ、破壊事件が起こる可能性があるからだ。

金日成・正日氏の銅像はいうまでもなく、プロパガンダポスターやスローガンに対する破壊事件が発生すれば、真っ先に反体制勢力の仕業と疑われる。そして、責任を問われるのは、現場や末端の治安機関。そうしたことを未然にふせぐため、さっさと撤去したと見られる。そうでなくとも、大会初日には、行政機関に対する放火テロ事件も発生していた。

治安機関が緊張感を高める一方で、庶民たちは、大会で改革開放路線が示されなかったことで、不満もさることながら「改革・開放への期待はやっぱり夢だったか…」と落胆。なかには、「70日戦闘では70日間苦労したが、今回示された経済発展5ヵ年戦略では5年も苦労するはめになる」と嘆く声もある。

金正恩氏は、党大会を通じて忠誠心を高め、体制をより強固にしようと目論んでいたようだが、どうやら逆効果になっているようだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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