「北朝鮮レストラン(以下:北レス)」に、リストラの嵐が吹き荒れている。先日、北レス従業員13人が集団脱北した。その背景には、北朝鮮の核とミサイルに対する国際社会の制裁、韓国政府の独自制裁による利用自粛などによる不況、それに加えて、従業員たちが海外情報に触れ、北朝鮮に絶望し、韓国での新しい生活を選択したことなどがある。

海外でのレストラン運営は完全に合法的なビジネスであり、北朝鮮の外貨獲得の柱のひとつとなってきたのだが、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、中国・丹東市内の北レスが、大々的なリストラを行い、営業規模を大幅に縮小しているという。

北レスとえいば、美貌のウェイトレスが有名だ。容姿端麗なウェイトレスの写真がネットで出回り、韓国の若者たちの間でアイドル並みの人気を博したほどだ。また、彼女らの歌や踊りも名物だったのだが、その時間すら減らし、コスト削減をはかっているという。

さらには、RFAの情報筋の自宅前で毎日見られていた、北レス従業員15人の集団出勤が、ここ最近は、7~8人に減ったそうだ。

働いていた従業員が帰国したのか、別の北レス、またはどこかの企業に異動したのかについて、情報筋もわからないとのことだ。別の情報筋は、各北レスの支配人が北朝鮮当局に支払う「上納金」の仕組みが、リストラを煽っている可能性を指摘した。

北レスの本国への上納金の額は、売上に応じてではなく、従業員の数に応じて決まる仕組みになっている。もっとも、食堂を経営する北朝鮮当局が、上納金ノルマのほかにも収入を維持するために、ウェイトレスに強制売春をさせていた例もあったそうだ。

中国内の北レスでは、これまで通常の売上に加えて、北朝鮮製品の販売などで得られる利益でしのいできたが、今回の「制裁不況」でついに持ちこたえられなくなった。とはいえ、苦労して築き上げた北レス店舗網を閉鎖する訳にはいかない。

また、仮に閉店となれば支配人(責任者)は、本国へ召還されて当局から厳しく査問され、場合によっては処罰、または片田舎の閑職に追いやられる。情報筋は、「リストラは北朝鮮当局の指示ではなく、実は、帰国を忌避する支配人が当局に提案し、受け入れられたのではないか」と分析する。

一方で、浙江省寧波市の北レス「柳京食堂」の支配人と従業員13人が集団脱北した事件を受けて、従業員の思想教育を再度行うために、一時的に仕事から外している可能性も指摘されている。

いずれにせよ、北朝鮮が国際社会から孤立を招く政策を続ける限り、展望はまったく見えてこない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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