今月8日に明らかになった北朝鮮レストラン従業員の集団脱北を受けて、北朝鮮の国家安全保衛部(秘密警察、以下:保衛部)が大々的な調査に乗り出した。

平壌在住のデイリーNK内部情報筋によると、保衛部は、海外に派遣されている人員の思想の再調査と監視を行うため、中国の瀋陽に数十の検閲組(監査グループ)を派遣。同時に、派遣労働者を監視する保衛指導員を交代させる作業も始めた。

自分たちにも火の粉が…

保衛部は、今回の集団脱北事件の原因を、保衛指導員の監督不行き届きと見ており、監視人員を倍に増やす案も検討されている。こうした保衛部の統制強化に、北朝鮮の幹部たちは戦々恐々としていると内部情報筋は語る。

「従業員を海外に派遣している貿易会社や、労働党中央の財政経理部、そして内閣各機関の幹部たちは、今回の事態に頭を抱えている。下手をすると自分たちも火の粉をかぶり、どんな目に遭わされるかわからないからだ」(平壌の内部情報筋)

これまで海外に人員を派遣していた機関は、新たな派遣を中止し、派遣されている人員を帰国させる措置を取り始めた。また、子どもを海外に送ろうとしていた幹部も「ぱっとしなくても北朝鮮で暮らす方がいい。下手に賢くなったら大変だ」と諦めているという。

ホテル建設資金のため

今回、集団脱北した北朝鮮レストランの従業員らは、「対外奉仕総局」柳京ホテル所属の労働党と行政機関の幹部の子どもたちと伝えられている。

柳京ホテルは、1987年に建設が始まったが、資金難で1992年に建設が中断した「北朝鮮経済難の象徴」だ。2008年から建設が再開されたが、未だ完成に至っていない。

実は、脱北した従業員らは、柳京ホテル建設に必要な資金を稼ぐために、海外に派遣されていたというのだ。

「平壌市民の間では、ホテルの党秘書、支配人、対外奉仕総局の局長に加え、従業員の監視役だった保衛部の幹部も無事では済まないだろうと言われている。事案の重大さを考えると、更迭され平壌から追放される程度の処罰では済まない可能性もある」(平壌の内部情報筋)

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