英国の銀行家が、タックスヘイブン(租税回避地)を利用して、北朝鮮の核開発や武器取引に関与していた疑惑が浮上している。パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した「パナマ文書」により明らかになったもので、詳細を英ガーディアンが伝えている。

疑惑を持たれているのは、かつて香港のHSBCに勤めていた英国人のナイジェル・コーウィ氏。金正日総書記が執権していた1995年に北朝鮮に渡り、同国初の外国系銀行、大同信用銀行(DCB)の総支配人とCEOに就任した。

コ―ウィ氏は、2006年にコンソーシアムを率いて同行の株の7割を取得した後、タックスヘイブンとして知られる英領バージン諸島に北朝鮮のフロント企業、DCBファイナンスを設立した。その際に関わったのが、「パナマ文書」の流出元であるモサック・フォンセカだった。北朝鮮が初の地下核実験を行ったのは、同年10月のことだ。

平壌に在住

2013年、米財務省は、DCB、DCBファイナンスの会計責任者で北朝鮮政府高官のキム・チョルサム氏を制裁対象に指定した。

国際金融当局の調査を避けて金融取引を行い、武器取引を行っている北朝鮮の朝鮮鉱業開発貿易会社(KOMID)と端川(タンチョン)商業銀行を金融面で支援したとの疑いからだ。キム氏は北朝鮮関連口座の数百万ドルを動かしていたと言われている。

モサック・フォンセカは、2010年に英領バージン諸島の金融調査庁からDCBファイナンスについての問い合わせがあるまで、北朝鮮との関係に気づいていなかったと釈明しているが、同年10月まで同社との取引を続けていた。

コーウィ氏は2011年、DCBの持ち株を中国企業に売却しており、制裁対象となっている機関との取引を行っていた認識はなかったと、弁護士を通じて述べている。

北朝鮮の「ビジネスチャンス」

同氏は現在、北朝鮮当局との合弁で設立されたフェニックス・コマーシャル・ベンチャー社の取締役を務めており、同社のホームページの記載によると、未だ平壌に在住している。

同社は「経済改革が進みつつある北朝鮮において、投資家にビジネスチャンスを提供する」ことを目的としており、北朝鮮政府との直接のコネがあるとホームページ上で謳っているが、具体的な事業内容は不明だ。ガーディアンによると、同社もモサック・フォンセカを通じて設立されたものだ。

BBCによると、モサック・フォンセカは、米財務省に制裁対象に指定された33の企業や個人と取引を行っていた。その中にはイラン、ジンバブエに加えて北朝鮮も含まれている。

パナマ文書を巡っては、豪州企業が制裁対象となっている北朝鮮企業との取引を行っていた疑惑が浮上しており、5月上旬に予定されている詳細公表で、新たな制裁破りの証拠が飛び出す可能性がある。

    関連記事