朝鮮半島の春は昔から「飢え」の季節だ。「春窮」または「ポリコゲ」と呼ばれるが、越冬用に蓄えておいた食糧が底をつき、麦の収穫が始まるまで飢えに苦しむ。韓国ではもはや昔話だが、慢性的な食糧不足に苦しむ北朝鮮では、現時進行形の話しだ。

とくに、今年は春窮に加えて、国連安保理での制裁決議採択の影響で、これまで飢えとはさほど関係なかった人まで食糧難が広がりつつあると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝える。

元「秘密警察官」でさえも食糧難

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の茂山(ムサン)出身で、現在は韓国に住む50代の脱北者、金さんによると、最近になって北朝鮮から電話がかかってくるようになった。電話の相手は保衛部(秘密警察)を定年退職し、年金暮らしをしている元秘密警察官だ。

彼は、金さんが北朝鮮にいた頃に教化所(刑務所)の刑期を短くするなど、様々な便宜を図ってくれた。しかし、韓国に来てから作った携帯電話の番号は教えていなかったため、不振に思いつつも電話に出た金さん。話を聞いてみると「少し援助してくれないか」と訴えられたというのだ。

「北朝鮮では、泣く子も黙る保衛部を勤め上げただけに、プライドも高く、定年後も国からかなりの配給がもらえるはずだ。それにもかかわらず、韓国在住の脱北者に援助を求めるということは、対北朝鮮制裁が国内に深刻な影響を及ぼしつつある証拠だ」(脱北者の金さん)

同様の状況は、同じ咸鏡北道でも比較的、食糧事情がマシな海岸部からも伝わってくる。

中国朝鮮族のヤンさんは、海岸部の清津(チョンジン)に住む親戚から電話がかかってきて、食糧難を訴えられたという。

この親戚によると、清津では3月下旬に入って市場のコメや生活必需品の値段が高騰している。穀倉地帯である黄海道(ファンヘド)と平安南道(ピョンアンナムド)の昨年のコメの作況が悪かったためだ。

ヤンさんは「食べ物が減る春窮期を迎え、食糧価格はさらに上がるだろう。最悪の場合、90年代末の大飢饉『苦難の行軍』の状況になるかもしれない」と心配そうに語った。

    関連記事