北朝鮮が18日早朝、ノドンと推定される弾道ミサイルを発射、日本海に落下した。2発目も発射されたが、こちらは上昇段階で空中爆発したと見られる。ノドンの飛距離は最大で約1300キロとされ、日本の多くの地域が射程に入る。

1993年、北朝鮮が初めてノドンを試射したときの大騒ぎは今も思い出される。第1次核危機が始まっていたこともあり、日本政府は北朝鮮のミサイル開発を直接の安保危機と認識。公安警察は在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)に対する捜査マニュアルを極秘裏に作成し、「600億円送金説」の解明に突き進んだ。

しかし当時と比べると、日本政府や世論は、北朝鮮のミサイルにすっかり慣れてしまったようにも見える。安倍晋三首相は18日午前の参院予算委員会で「断固として非難する。国際社会と緊密に連携し、毅然として対応していく」と答弁したが、この抽象的な言葉は、とくに何も手段を講じる考えはないというのと同義だ。北朝鮮がすでに4回も核実験を強行していることを考えれば、こうした光景は非常に奇妙かつ恐ろしいものと言える。

マスコミも、北朝鮮が米国を射程に収めるべく開発を進める大陸間弾道ミサイル(衛星ロケット)については大きく報じるのに、すでに300発以上が実戦配備されたとも言われるノドンの脅威度については真剣に分析しない。

このまま金正恩氏の暴走が続けば、いずれノドンに核弾頭が搭載される日がやってくる。そんな状況下で、日本人は今と同じように安心して暮らせるのだろうか。

あるいは、現在開発されているミサイル潜水艦が完成し、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)にも核弾頭が装着されるかも知れない。そうなると、集団的自衛権の行使に踏み切ろうとしている日本は、核武装した北朝鮮に先制攻撃をしかけなければならない状況すら考えられるのだ。


そんな状況になったら、日本は一体どうするべきか。これは、なかなか答えの出せない問題だ。だからこそ、現在の状況を「今そこにある危機」として認識し、早い段階から広範な議論を行うことが重要だろう。

そしてその中で、北朝鮮を巡る問題の本質――あの国の民主主義を実現させることなく、核とミサイルの暴走は止まらないという現実に目を向けるべきなのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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