北朝鮮当局は今月10日、開城(ケソン)工業団地の閉鎖を決定し、残された韓国企業の設備などを清算、つまり没取すると宣言した。これに対して北朝鮮国内から当局を非難する声が上がっている。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、工業団地の閉鎖を最も悲しんでいるのは、元従業員とその家族だ。当局は彼らの動揺を懸念し「そのうち再開される」と宣伝してきたが、没収の発表がなされるや「騙された」と怒っている。

「当局の財産没収は恥ずかしい」

また、工業団地と直接関係のない住民も「(当局は再開されると宣伝していたが)どうせ嘘だと思っていた」「まるで強盗」と当局を非難する声を上げている。一部の住民からは工業団地に勤めていた北朝鮮労働者が設備を壊したり、盗んだりしたことを隠すために「再開される」との嘘を流したと見ている。

一方、「いつでも韓国側の人員を撤収させ、自分たちで運営するための準備をせよ」との金正恩氏の指示はかなり前から出されていたと情報筋は証言する。つまり、工業団地の閉鎖と設備の没収はかなり前から決まっていたのというのだ。

こうした当局のやり方に対して住民は、「契約を一方的に破棄して、財産を没収するのは今に始まったことではない」「これで何回目だ」「恥ずかしい」との反応を示している。

また、北朝鮮の大学生たちは、今回の件に加えて、北朝鮮当局が過去に行った資産没収のことで論争を繰り広げているという。

北朝鮮当局は2003年、国際社会の援助で咸鏡南道の錦湖地区で建設が進められていた軽水炉型原子炉の建設を、完成直前に中断させ、設備と装備を没収、韓国側の人員を全員撤収させた。

また、韓国は盧武鉉政権だった2007年、繊維、靴、石鹸など8000万ドル相当の軽工業の資材を、10年分割返済を条件として北朝鮮に提供した。北朝鮮は、地下資源の開発権で返済するとの意思を示したが、具体案は示されなかった。韓国側は返済を要求しているが、今に至るまで北朝鮮側からの反応はなく、借金を踏み倒した形となった。

こうした措置は、大学生ではなくても、北朝鮮の人々なら概ね知っており、プライドが高いと言われている北朝鮮にとっては、非常に恥ずかしい行為と受け止められている。

一方、何度も没収されているというのに、北朝鮮への投資と建設を続ける韓国人に対しては「本当に善良だ」と評価しているという。しかし、この裏には「バカ正直」という意味合いが込められている可能性もある。

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